8月21日-(10)-
「小声で話して」
「あ、うん」
健ちゃんとヒデくんの背中に目をやったけど、起こしてしまったわけじゃなさそうだ。
「起きている美結さんを窓から確認した」
「うん」
全然気づかなかったから私はボーッとでもしてたんだろうけど、建物の外にいた栞那ちゃんが部屋をのぞいてたみたいだ。
「今日の選挙だが」
「あ、さっきね、私が立候補しようって話になったの」
ヒデくんが言うには、ホントは健ちゃんがいいそうだ。
でも、栞那ちゃんが立候補するかもしれないから、一番確実なのは、まだ国王になってない私なんだって。
「賛成しない」
「そうなの?」
ちょっと迷ったけど、必要なら栞那ちゃんは答えてくれるはずだし
「誰ならいい?」
意見を聞くことにした。
「鹿生くん」
即答。
(え?)
「鹿生くんだったら」
確かめておかずにいれなくて
「賛成してくれる?」
また聞いてしまう。
「する」
これも即答だったので、私もすぐ言う。
「分かった。2人が起きたら鹿生くんにしよう、って言ってみるよ」
なのに返事はない。
「栞那ちゃん?」
やっぱり返事がない。
(行っちゃったのかな)
栞那ちゃんが明日の国王にふさわしいのを健ちゃんだと考えてたなら、もう用は済んだだろうから、いないのも当たり前だ。
またドアに背中をくっつける。
どのくらい時間がたったのか分からないけど、何となく日差しが柔らかくなったような気がする頃
「建蔵は・・・まだ寝てるんだな」
やっとヒデくんが起き上がった。
「うん」
「俺は結構寝てたか?」
「うん。絶対2人とも疲れてるんだよ」
「そうかもな」
「うん。でも、ずっと静かだったから、グッスリ寝れてたんじゃないのかな」
「さあなぁ」
ヒデくんは首をかしげながら健ちゃんの肩を揺らし始めた。
「健蔵、そろそろ起きろよ」
「・・・」
まだ起こさなくてもいいかと思ってたけど、別にヒデくんを止めたりもしなかった。
「・・・ん」
ちょっと丸まってた体を伸ばして、健ちゃんも起き上がった。
「・・・悪ぃな美結、結構寝てたかもしんない」
「いいよ、そんなの。ちゃんと休めた?」
確かこうだったはずと思いながら、笑顔を浮かべれるように表情を動かす。
そして
「2人が寝てる間に考えたんだ」
握った両手を胸の前で上下に振る。
「明日の国王は私って話にしたじゃない」
「ああ」
「一応、栞那ちゃんに聞いてみようよ?」
「え?」
「美結」
2人が何か言おうとするのを振り払うように
「夜集会の前に聞いてみて、健ちゃんに賛成してるなら健ちゃん、どっちか分かんなかったら私、ってことでどう?」
ブンブンブンと両ゲンコツを振った。
(私、栞那ちゃんが賛成してくれるって知ってるし)
裁きに因る死亡者
なし
裁きに因らない死亡者
なし
国家の人口
6人




