8月21日-(9)-
「じゃ、美結、頼んだぞ」
「うん」
大きくうなずくとヒデくんと健ちゃんが背中をこっちに向けて寝転んだので、私はドアにもたれかかった。
細く長くため息をつく。
私がどうしてこうしていれるのか。
考えれば考えるほど、私が自分のためにさえ役に立ってたわけじゃないこと思い知る。
だとしても、私は今からでも誰かの何かの役に立たなければいけない。
昨日の夜も健ちゃんとヒデくんは私のため順番で起きてくれてたはず。
そういうのは昨日までと同じだから、今日の夜に備えて昼には順番で休むことになった。
でも、よく考えると、誰が何をするか分からないときと違って、今日からはもう舟山さんと藍川くんだけ気にしてればいいんだ、と気づいた。
2人の方から美結は起きてろ、なんて言ってくるはずないから、寝てる間は私が起きてるから2人とも休めばいい、って私の方から言ってみた
そしたら、ヒデくんからも健ちゃんからも、なんでそんなこと言うんだ、って聞き返された。
私がいつもどおり、しどろもどろになりながら、自分にも良く分からないような説明をしたら、2人ともがあっさり一緒に休むことを受け入れてくれた。
まあ、夜は今までどおりだってことで念を押されたけど、私だけ昼寝しないで起きてれば2人のために役立てるんだと思ったら、それでとても嬉しい気持ちになれる。
もう10分くらい経ったかもしれない。
(・・・・・)
ヒデくんも健ちゃんも眠ってしまったのだろうか、まだなんだろうか、とにかくとても静かだ。
こんなに静かな中で私だけ起きてるというのは、寂しいというか、なんとなく一人で取り残されたような気分になってジワッと涙が浮かんできた。
毎日、しかも夜に真っ暗な中何時間もこうして一人でいれる健ちゃん達はスゴいんだなって、改めて思うし、その2人のためになるのだったら、寂しいのくらいガマンしなきゃならない。
(これからどうなるの・・・)
今日も昨日もその前も、今まで何回、何の意味もないことを考えたか分からない。
どうせまた結論が出るはずもないのに、結局考えずにいれない。
やられる前に・・・というヒデくんの言葉には納得できない。
でも、それはそれでしょうがないんだ、という思いもあって、2つの声が順番に頭の中をグルグルグルグルし続ける。
その時
「っ!」
もたれてるドアが、ノックというより指でトントンとされた感じに鳴って、急に胸の中がギューッと握りつぶされる感じになったけど、何か答えないといけないから
(・・・)
覚悟を決めるみたいに大きく息を吸ってから一度止めて、ドアにささやく。
「誰?」
「・・・栞那」
「え?栞那ちゃん」
ドアの外からは、シッという音がした。




