8月2日-(9)-
仁藤くん達の話によれば、まず決めるべきなのは賛成率をどうするかというところらしい。
「何か議題出しても、3分の2の賛成がなくて否決されてしまったら大変だから、過半数ってことにしたいんだが、みんな、どうかな?」
長谷田くんが語り掛ける。
「問題だと思う人は言って欲しい」
「いいんじゃないのか」
長谷田くんにすぐ答えたのは、後ろで腕組みして議論には加わってなかった田月くんだ。
「田月が、いいって言ってくれたが、他の人はどうだ?」
「賛成」
「オッケー」
長谷田くんに応じるようにパラパラと男子の声がする。
「じゃ、臣民議会の可決は出席者の半数で決するということに賛成の人は拍手をしてくれ」
パチパチバチパチと拍手。
「今のは3分の2の賛成ってことでいいな」
またパチパチバチパチと拍手。
1つ決まったので、最初の臣民議会は、3分の2の人が賛成しないと何か決めれないというところだけを変えて終わったようだった。
「めんどくさぁーい」
拍手が終わって、森さんが心の底から面倒そうに言ってから机に突っ伏した。
「ねえ、こんなの二度とやりたくないんだけど?」
三田さんが続いた。
「そんなこと言わないで、これからも協力してくれよ」
って、村井くんが言ったけど、森さんは机に突っ伏したまま腰だけでイスを動かしてから、やっと顔を上げて
「あのさ、村井」
村井くんに呼び掛ける。
「もうなんもないんだよねー?」
つまらなそうな表情だ。
「なに?」
村井くんも一瞬では森さんの言葉の意味が分からなかったみたいだけど
「んー、まあ、取りあえずはないな」
なんて答えるくらいだから、そんな時間がかからないでも森さんの言いたかったことが分かったんだろう。
「あっ、そ」
森さんは、急に村井くんから三田さんの方に向きを変えて
「じゃ、もう、こんなとこいなくていいんだ?」
と言った。
今度は、こっちとは逆向きだから、どんな表情なのかは分からない。
「ホントに、いいんだよね?」
「ああ、まあ」
「はい、終わり終わり」
森さんは、机の横に掛けてたバッグをつかんで立ち上がると
「明日の朝は、7時だっけ?」
聞いたのが自分か分からなかったんだろう、村井くんが答えないでいると
「そのときまで来ればいいんでしょ、村井くーん」
と続けて言ったので、なぜか仁藤くんが
「7時に遅れるなよ」
と返したら、その言葉が終わる前に、もう森さんは部屋を出て行ってしまってた。
「あたしも行こうっと」
三田さんも立って出て行くと、それに続いて、何人か男子が立って集会室を出る。
反対に、議会が終わったのが分かったからだろう、入れ替わりで集会室に入ってきた中岡くんは、長谷田くんのところへ。




