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LEVIATHAN~Sodalis~  作者: 黄帝
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8月20日-(10)-

 頭と察しの悪い私にさえ、はっきり栞那ちゃんが何を言いたいか分かった。

 紙で手をケガしたことは私もあるけど、クシャッと丸まったティッシュ1個でケガしたことなんてないし、ケガするとも思えない。

 柄のないナイフは使いにくいし、普通のナイフより簡単に手をケガしてしまうかもしれないスゴく危ないものだけど、何かを切るため注意と工夫でナイフとしてまだ使えるはずだ。

 「美結さん」

「えっ!あっ!はいっ!」

栞那ちゃんが突然私を呼んだので、かなり驚く。

「丸めたティッシュと柄なしのナイフ。美結さんならどうする?」

「え?」

栞那ちゃんの質問の意味が分からない。

「どうするって?」

「必ず一方を捨てなければならないとき、美結さんならどうする?」

言い直してくれた。

 「私なら・・・・・」

モゴモゴとして黙ってしまうのは、実際の藍川くんの答えが、私の出したい答えと違うからだ。

「美結さんの考えとは違うだろうけれど、柄なしのナイフは処分可能なうちに見切らなければならない」

「・・・」

 共感できるかどうかじゃなく、藍川くんの考え方、田月くんと村井くんが裁かれたわけは分かった。

 危なくないってだけで、役に立つこともない紙くず。

 間違いなく危ないけど、道具としては使えるナイフ。

 結局メリットとデメリットは、いつも抱き合わせだし、もっとずっとからみ合ってて、時と場合でどっちかが大きくなったり小さくなったりする。

 今はギリギリの状態なんだし、ケガを覚悟してでも使うくらいのメリットがない物だったら、迷わずすぐ捨てなくちゃいけない。

 逆に、何のメリットもデメリットもない物だったら、まだもう少し持ってたっていい・・・

 「藍川は次にどう動くんだ?」

健ちゃんが栞那ちゃんの方を見て聞く。

「明日の法次第」

「明日の国王は舟山だから・・・藍川の代理ってことか?」

ヒデくんの言葉に無言で小さくうなずくと

「・・・」

イスから立った栞那ちゃんは、まっすぐに食堂から出て行った。


 「本当に危ないのは、明らかな敵よりも中途半端な味方ということか・・・」

「そうかもね・・・」

下を向いたまま答える。

「あいつにとって俺達は・・・」

「え?」

ちょっと顔を向けると、ヒデくんはハッとしたような表情を浮かべて

「あ、いや」

と言ってから私をジーッと見始めた。

「さっき健蔵とも話したけど、俺と健蔵が美結のことは守るから」

「うん」

「そうだ、そうそう。美結は心配しなくていいんだ」

続けて健ちゃんも言ってくれた。

「うん」

無理して笑顔で言ってから、二人によく見えるよう、強くスゴく大きくうなずく。

 裁きに因る死亡者

  村井麟汰

  田月信之輔


 裁きに因らない死亡者

  なし


 国家の人口

  6人

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