8月20日-(7)-
あの2人をハメたのがわたし達だってことは、とっくにバレバレなんだし、当然物凄く気まずい感じだったけど、安齊さん達が2人を捨てに行くっていうときに私達が行かない方が問題あるとわたしも思ったし、優秀くんも同じことを言うから、わたしも優秀くんもリヤカーに死体を積んだり、リヤカーを押したりするのを手伝った。
そして海に捨てた後は、安齊さん達を構うことなく優秀くんが建物の方に歩いて行くのを追い掛けて、今日から2人のものになった部屋に来た。
「これで2人になれたな」
「うん・・・」
この日が来ることを目指してたし、この日が来るように頑張ってきたから、優秀くんの言葉がスゴク嬉しくて、ちょっと泣いてしまった。
「なんだ、どうしたんだよ?」
「思ってた以上にうまくいったな、って」
「そうか?」
「うん」
「まあ、確かに、お前にぶつからせるだけで裁けたんだから、楽だったな」
「そうだね」
「あんな簡単に2人も始末できるんだから、森が何度もあれを使った訳が分かるな」
「あはははは、そうだね」
ここに来て初めて口を開けて笑った気がする。
もう無理しなくても心の底から笑えた。
だってやっと、2人きりになれたんだから。
(わたしは初めて、一番正しいものを一番最初から選べた)
田月くんと村井くんを朝になったら海に連れて行く準備だけ終わらせて、飲み物でもと思って栞那ちゃんを食堂に誘ったら、昨日と同じく一緒に来てくれた。
健ちゃんとヒデくんもいる。
私と健ちゃんはイスに座ったのにヒデくんは立ったまま
「まったく、ひでぇよな、俺達」
と言うけど
「え?」
何がヒドいのか分からないので
「っと、ヒデくん」
聞こうと私が口を開いたのとき、かぶせるみたいに健ちゃんが聞いてしまった。
「何がだよ、英基?」
「ひでぇ勘違いしてたんだ、俺達は」
「勘違い?」
私が聞き返すと、ヒデくんは近くのカベを蹴った。
「あの4人をまとめてたのは、藍川だったのか?」
「・・・」
自分に聞かれたって分かってるだろう栞那ちゃんが黙ったままなのは、ヒデくんの言うことと栞那ちゃんの考えが同じだからだって、私には分かった。
「藍川くんがまとめ役だと、何か違うの?」
「何が違う・・・」
ヒデくんは首をかしげたのに、栞那ちゃんは手を唇に当てない。
(栞那ちゃんの答えは出てる)
「・・・」
栞那ちゃんがスーッとこの場を離れていこうとするので
「・・・ねぇ、引き留めて」
ささやくと、ヒデくんはチラッと私に視線を向けてからテーブルを指でトントンとして
「榮川、もう少し俺達と話してくれるか?」
イライラをムリヤリ抑えたような声で言う。
「・・・分かった」
栞那ちゃんは一番近くのイスを引いて座ってくれた。




