8月20日-(5)-
集会も終わって部屋に戻る途中、今朝からのことを思い返す。
「起きろ、涼香」
揺り動かされて目が覚めた。
「・・・・・」
優秀くんに起こされるのは初めてかもしれない。
「田月と村井が寝てるうちに言っておきたいことがあるんだ」
「え?」
「俺達のこれからについてだ」
「うん」
起き上がって床の上に座り直して、優秀くんの話を聞いた。
「・・・それで明日から大丈夫なの?」
「ああ」
「うん」
優秀くんが言うことだから間違いないだろう。
「じゃ、田月と村井を起こしてくれ。今日の作戦を話す」
「分かった」
2人も加わった後は、今日の国王選挙の進め方だった。
そこで話し合って決めたパターンは3つ。
最初から安齊さんが立候補したら、わたしも立候補するというのが1つ目で、一番あり得そうだった。
次は鹿生が立候補したら、わたしが立候補するというのだけど、たぶん安齊さんも立候補するだろうっていうのが2つ目。
そして一番あり得なさそうだけど、一応考えておいた方がいいだろうってことだったのが、安齊さんも鹿生も立候補しないようだったら、わたしが立候補するという3つ目。
実際にさっきの集会で使ったパターンは2つ目だったから、最高でも最低でもなかったけど、予想もしてなかったのは、榮川さんが安齊さんじゃなくてわたしに投票したことだった。
(何で?)
というのは、その時も思ったし、さっきのことを思い出してる今だって、全然理解できない。
まだ訊けてないけど、優秀くんだって思ってるはずだ。
人付き合いが上手じゃないし、他人同士の関係も気にしないでいたわたしだから、今までいなくなった人達のつながりがどうなってたか、良く分からない。
でも、他の誰からも孤立してるような榮川さんが、安齊さんとの間にだけ何かつながりがあるのは、2人だけで喋ってるときもあることから気付いてた。
だからこそ不思議だ。
「涼香、大丈夫か?」
「!」
我に返ると、振り返ってくれてる優秀くんに答える。
「あ、ごめんなさい、ちょっと考え事してて」
「そうか、今からが一番大変なんだし、頼むぞ」
わたしを真っ直ぐ見つめる視線は、わたしを信頼してくれてる証拠。
「うん、大丈夫だよ、わたし」
ボーッとしてる場合じゃない、私達にとって今までで一番大事なことを成し遂げないと。
優秀くんは、わたしのところまで戻ってきて
「・・・本当に大丈夫か?」
心配そうにするので
「はい」
覚悟を決めて頷く。
「分かった、涼香にしかできないことなんだから、頑張ってくれな」
「はい」
もう1回頷いてから
(・・・・・)
思わず村井と田月の方に目を向けてしまった。
でも、優秀くんより前を歩いてる2人が気付くわけもない。