8月20日-(3)-
食堂に来てはみたけど、ホントの意味で食欲があったのは最初の日の昼だけで、あとは栞那ちゃんが言うとおりだと思ってムリにでも何か食べてる感じ。
美愛のときも最低の底が抜けたみたいな気分で、詰め込んだ物を全部吐きそうになって、それでもまだ人が多いころだったから、気持ちを支えれたのかもしれない。
美紗ちゃんのいなくなった朝、食堂には私と健ちゃんとヒデくんの3人だけだ。
うるさくないくらいのボリュームだったら、物音一つしない静けさより、たとえそれが少しもいい気持ちになれないような会話だとしても、何か聞こえてきた方がマシだった。
それが分かると、おせじにも静かじゃなかったし、いくらボーッとしてる私だってプラスの感情を持ってたわけじゃない、愛麗沙や三田さんのことを思い出してしまった。
私は、こういうのに耐えれない。
「ねぇ、ヒデくん」
だから言うべきじゃないと分かってても、黙っていれない。
「なんだ?」
健ちゃんは自分が呼ばれたわけじゃないのに食べるのを止めて私を見たのに、食べるのを止めないところを見るとヒデくんは、またいつものように美結の軽口が始まるくらいに思ってるんだろう。
でも違う。
私は別な私に、もう能天気じゃない私にならなきゃいけない。
「私ね、このままじゃ今日こそ裁かれちゃう気がするの」
「バカ、何言ってんだ、美結!」
やっとヒデくんは食べるのをやめた。
「だって・・・」
ヒデくんの声が少し大きかったので、口ごもってしまう。
「なんでそんなこと言うんだ、美結」
健ちゃんが聞いてくれた。
「あ、うん」
2人を交互に見る。
「・・・今日からは、もうヒデくんと健ちゃんと私、それに栞那ちゃん以外に誰かいるの?」
「え?」
「村井くん達しかいないじゃない」
「まあ・・・な」
「村井くん達の周りは昨日までとなんにも変わらない」
「・・・」
「それで昨日まで裁かれなかったんだし、今日も裁かれないと思う」
「美結、それは」
最後まで言わせて、という気持ちを込めてヒデくんの前に手を広げる。
「・・・」
「ヒデくんとか栞那ちゃんは、何にでもすぐ気づくし、元々いろいろ考えてるから、二人の言うとおりにしてればと思って、ずっとそうしてきたよ」
「・・・」
「でもね、私、ここに来てからまでうっかりしてたなって後で思うことが結構あった」
「・・・」
「ここでのうっかりは、大変なことにつながって、誰かが命をなくすことが普通にあるのに・・・」
2人にこんな私を見せるのは初めてだった。
「私、頭良くないから変なこと言うだろうけど、自分の考えを2人に知って欲しい」
「当たり前だろ。俺も美結の考えを聞きたい」
「ありがとう」
今浮かべれる精一杯の笑顔で答えた。