8月20日-(1)-
ケガだけはしたくないから
何も切れない刃物が欲しい
まだ薄暗いうちに目が覚めた。
「・・・」
昨日美紗ちゃんも愛麗沙も夜集会前には裁かれてるし、他の誰かが裁かれるとは思えなかったから、見るまでもなく内容なんて分かってる。
昨日の国王は藍川くんで、一番最初の日もなったから、これで2回目。
まだ1回も国王になったことがないのは私と舟山さんだけで、全部でもう8人しかいないから、2回目だって当たり前。
昨日の夜集会に来た8人で国王を決めるとき藍川くんだけが手を挙げたので
(もしかして、ここで?)
ヒデくんは国王だから直接言わないだろうけど、目線とかで私にも手を挙げるよう合図してくるんじゃないかと思った。
昨日のことで、村井くん達が愛麗沙をワナにはめたことが分かったし、あの4人はスゴく危険なんだってことを私でさえ疑うわけにいかなくなっているから・・・
まあ、ここに来てからも舟山さんとは話すことがあって、何となくは何してたのか知ってるように思うけど、他の男子3人と話すことが私はなかったし、ヒデくとか健ちゃんもあまり3人のことを良く知らないようだから、ヒデくんなんかだと藍川くんを国王にするのなんか止めたいんじゃないかと直感した。
でも、美紗ちゃんのことがあるから、国王になることそのものとは関係ないんだろうけど、自分が国王にされちゃうかもしれないという考えが頭に浮かんだ途端、何とも言えない恐さを感じてしまってもいた。
でも、私の考えすぎだったのか、ヒデくんは何も合図とかしてこなかったし、健ちゃんに何か言っておいたわけでもなかったみたいで、そのまま藍川くんが国王に決まった。
美紗ちゃんがいてくれなくなったことと、久しぶりに栞那ちゃんとの接し方が分からなくなってたことで、昨日の夜集会の私は頭の中がどしゃ降りみたいに荒れてしまってて、国王にならなくて済んだのにだけ、ほんの少しホッとしてた。
でも、美紗ちゃんの手紙の内容が何度も何度も繰り返し頭の中をグルグルして、端末が藍川くんの作った法律を教えてきただろうメールが届いた後もしばらくは寝れなかったし、こうして明け方にもう目が覚めてしまった
「ねえ」
ちょっと頭だけ起こして、ドアに寄り掛かってる健ちゃんに小さく声をかける。
「何だ美結。まだまだ寝てていいんだぞ」
健ちゃんも小声だ。
「ありがとう。でも、あんまりよく寝れないから」
「そうか」
「うん」
「俺が起こすまで、横になってだけいろよ」
「そうする」
たたんだタオルの上に頭を戻す。
「ああ」
健ちゃんのことだ、ヒデくんは自分の隣で眠ってるけど、私は昨日みたいなことがあったら寝れるわけないのを分かってくれたんだろう。