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LEVIATHAN~Sodalis~  作者: 黄帝
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8月19日-(8)-

 「美結、少し早いけど食堂行くぞ」

「・・・・・」

 頭が真っ白になったまま遠くの海を見る。

(もう1回、たった一言でも美紗ちゃんと話したかったのに・・・)

でも美紗ちゃんは、あれより向こうに行ってしまった。


 栞那ちゃんに教えてもらう前に美紗ちゃんを見つけたとき、美紗ちゃんは身体をまっすぐにして胸の上に両手を組んで、他の誰よりもきちんとしてたし、爆発も背中と腰と右ひざだったようで、キレイな顔は眠ってるだけに見えた。

 いろいろ考えて、私より先に手紙は栞那ちゃんに読んでもらおうかなとか、そんなことも考えて、でも、私への手紙だから私が最初に読まないと裏切りになると思ったし、美紗ちゃんが袋に入る前に最後まで読むことに決め、他の3人に頼んで2人きりにしてもらってから、小声を出して読んだ。

 裁かれた美愛を最初に見つけたときメモ帳を拾ったこと。

 書き跡から内容とあて先が分かったのでメモを届けたこと。

 愛麗沙のせいで裁かれたたくさんの人達のこと。

 とても大切にしてきた想いのこと。

 今を終わらせようと思ってること。

 「・・・いつも・・・誰にでも、優し・・・い美結、ちゃん・・・と一緒、に・・・大事な想い・・・を守っ、て・・・いきたい・・・です」

 自覚してるくらいのヒドい泣き虫の私だけど、最初のページからずっと美紗ちゃんの覚悟が伝わってきてたし、美紗ちゃんは生きるのをあきらめてたわけじゃなかったって知れたから、読み終わった後も涙は出なかった。

(美紗ちゃんの大事な人を、私も大事にしなきゃ)

 手帳をバッグにしまうと

「いっぱい、がんばってたんだね」

美紗ちゃんの両ほほをなでてから、3人を部屋に呼んだ。


 「美結さん」

「!」

栞那ちゃんの声がすぐ後ろからして、ハッとする。

「え?」

「二人が、少し早いけれど食堂へ行こうと」

「あ、うん」

栞那ちゃんの肩越しにヒデくん達が建物へ歩いて行くのが見える。

「っと、栞那ちゃん・・・は?」

「行く」

クルッと私に背中を向けた。

「そっか。うん、ありがとう」

 栞那ちゃんの後ろを歩き出す。

(どうしよ・・・)

美紗ちゃんの手紙を最後まで読んだので、さっきの考えならもう栞那ちゃんに渡していいはずだ。

(・・・)

 手紙の中には栞那ちゃんのことも書いてあって、美紗ちゃんと栞那ちゃんは私の知らないうちに交流してたみたいだった。

 だから急に、どうしていいか分からなくなってしまう。

 私が知らないうちに交流してたことがイヤとかじゃない。

 栞那ちゃんのことだから美紗ちゃんの覚悟に気づいてたんじゃないの、って考えが止まらなくて、胸の中がチクチクチクチクし始めた。

(気づかないなんてことが・・・)

 黙って歩いてるうち、食堂に着いた。

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