8月19日-(7)-
「昨日3人減って、今日前田がいなくなったなら、今は9人になってる」
「・・・」
「一番目障りな奴等は鹿生と仁藤だけど、森は違うだろ?」
「違う」
首を振る。
「やっぱり榮川か」
頷いた。
「知ってのとおり、鹿生と仁藤は安齊をガードしてる」
「・・・」
「榮川はパッと見一人で動いてるようで、実は安齊と組んでるはずだ」
「あたしは違うと思う」
すぐに森が否定したので
「榮川は安齊とだけ時々立ち話してても、長く話してるわけでもないから、おれの考え過ぎかもしれないが」
村井は取りあえず森を持ち上げた。
「榮川が鹿生とか仁藤とつるんでるようには見えないし、安齊と組んでると言われても、なんかピンとこないみたいだけど、大事なのはこれからだ」
「・・・」
「9人になった今なら、榮川が安齊達と組んでたって多数決で勝てるんだ」
「多数決?」
「臣民議会だ」
「ん?」
森は不思議そうな顔をするが
「2日目に国王以外の全員で集まったことがあっただろ?」
村井に言われると
「ああ・・・」
思い出したような顔になった。
「あれを今日もう一回開くんだよ」
「はぁ?なんで?」
「臣民議会には国王が出れないから、8人でやることになる」
「それで?」
「仁藤が出れないんだから、榮川が安齊と鹿生と組んでたとしても3人だろ?」
「うん」
「ここにいるおれ達は5人。提案する奴は投票できないけど、それを引いても4対3なら賛成の数で勝てるだろ?」
「そうかもね」
「田月と藍川と舟山はもう説得してあるんだ」
「え?」
「俺は鹿生と安齊が邪魔だし、森は榮川が邪魔なんだから、今日一気にそいつ等を消せるチャンスを生かしたいと思わないか?」
「うーん・・・」
森は腕組みをして壁に寄り掛かる。
1分くらいしてから
「あたしは何すればいいの?」
森が訊くので
「お、やる気になってきたか」
村井が確かめると
「何やらされるか聞いてからだって」
顔をそむけた。
「そうだな、榮川達をどういう目に遭わせたいかを決めていいぞ」
「なにそれ?」
「榮川達に何かをやらせる提案をすれば、臣民議会の多数決で森の思ったとおりになる」
「えぇ?」
村井は森に向かって自信たっぷりな感じで頷いた。
「・・・ホントにあたしが言ったとおりになるの?」
「そのとおりにしなければ裁かれるからな」
「・・・」
「榮川達がいてもいなくても臣民議会を開ける人数にはなるから、開くのを知らせるかどうか森に任せる」
「そう」
前田のことを思い出したのか、無意識にだろう、森が首を触った。
「あいつらには教えない。わけ分かんないうち死ねっての」
「そうか。じゃあ、12時に臣民議会を開くことにするから、それまでに臣民議会に提案する中身を考えといてくれ」
「分かった」