8月2日-(7)-
今日の法律は決まった。
そうすると、村井くんが立ち上がって
「みんな、臣民議会とかっていうのを開いてもいいかな」
と言い出した。
私はヒデくんの方を見る。
そうすると、ヒデくんは、私が何のために見たのかすぐ分かったみたいで
「美結が覚えてるはずはないけど、昨日最初に自然法というのを読み上げたんだ」
と言うので
「え?何かズラズラーッと読み上げてたのは知ってるよ」
言い返す。
ヒデくんは苦笑いみたいなのを浮かべて
「まぁ、そのくらいは覚えてるだろうけど」
と言ってから
「そのズラズラーッってのが自然法だったらしくて、その中に臣民が議会を開いて自治を行うというのがあったんだ」
と教えてくれた。
「ふぅん」
私は2、3度うなずいて、ヒデくんに向けてた視線を村井くんに戻そうとした。
そうしたら
「美結、これ」
ヒデくんが私に自分の端末の画面を見せてくれた。
「ここに自然法が書いてある」
「うん」
言われたまま、ヒデくんが持ったままの端末をのぞき込む。
「村井、何のために議会を開くんだ?」
長谷田くんが村井くんに訊いているようだ。
「いや、別に今すぐ何かを決めようってわけじゃない」
村井くんの声がして
「実は思ったんだけど、議会の開き方も決まってないんじゃないか」
と続いた。
「え?そうなのか」
ちょっとビックリしたような長谷田くんの声がしたので端末から目を離して顔を上げた。
「もしかしたら、そうかもな」
私がもう見てないのが分かったようで、端末でページを開いてくれてたヒデくんが、端末を見返しながら言ったところで
「となると、できることは何でもやっておいた方がいいと思うんだ」
村井くんが、みんなを見回すようにする。
「どうだろう?」
「分かった、議会の開き方を決めることにしよう」
すぐ答えたから、ヒデくんは納得できるようだった。
「村井と英基が言うとおりでいいぞ」
すぐに長谷田くんも賛成した。
「ってことだから、中岡、悪いけど廊下にでもいてくれないか」
「ああ、そうだな」
長谷田くんに言われて、前に出てて立ったままだった中岡くんは
「じゃあ、廊下にいるから」
すぐに集会室を出て行った。
「何で、行っちゃったの?」
できるだけ声をひそめてヒデくんに訊く。
「国王は中岡だろ?」
ヒデくんも小さな声で答えてくれた。
「うん」
「臣民が自治を行う議会っていうくらいだから」
「うん」
「国王はここにいない方がいいからだよ」
「そっか」
ヒデくんの説明ですっかり分かったわけじゃなくて、半分くらい。
だけど、一応納得したふり。