8月19日-(6)-
俺達の部屋に来た後、森は勝手に話し始めた。
ここに来てから昨日まで、三田と矢口と猪戸がいて、でも昨日死んでしまったので、独りで寝たのは初めてだったらしい。
(自分で殺したようなもんだろうに、よくそんな・・・)
「あたしは別に一人が寂しかったりイヤだったりなんてことないし、昨日だってそれなりに気分良く寝れてた」
(こいつだったらそうかもな)
「で、その変な声は何なんだ?」
村井が訊くと
「は?」
今まで見たことがないくらい嫌そうな表情を浮かべた。
「前田が死んだってのと関係あるんだろ?」
「んまぁ・・・」
森は何でだか言葉を濁して言いたがらないが、今日の服装もあって俺には何となく察しがついてる。
昨日森がしてた話だと、今までいた取り巻きを全員処分しても森は前田を選んだっていうのに、逆に自分は前田に選ばれてなかったんだってことに気づいたから前田が怖くなって、昨日のうちは国王の前田を避けてた。
今日になって急に首と腕を隠してるのは、日付が変わってから朝集会までの間に、たとえば寝てるところを前田に襲われるとかした痕が誰から見ても分かるくらい残ってるせいだろうし、女同士がガチの1対1で相手を死なせるのは簡単なことじゃないはずだから、前田は森の返り討ちに遭ったわけじゃなくて、裁かれたんだろう。
襲われたら当然森だって抵抗するだろうし、それを暴力振るったって告発することも前田の頭にはあったのかもしれないが、襲われて暴力振るわれたとかケガさせられたとかの理由をつけた森の告発が早かったから、裁かれたのは前田の方だったって、ざっとそんな感じだろう。
ただでさえ自分が選ばれてないことでムカついた森は、俺達には言わなくても自分の中で前田は処分する人間と決まってただろうに
(そこを逆に襲われたら)
前田が死んだくらいで溜まってるムカつきがなくなったりしないはずだ。
「言いたくないなら」
「うん」
村井に向かって首を振る森。
「・・・まぁ、いい」
村井も森に首を振ってから
「森に言っておきたいことがあるんだ」
と言う。
「は?あたしに?」
また顔をしかめる。
「あのさ、カンチガイとかしないでね?」
「勘違い?何のことだ、それ?」
村井が訊き返すと、森の表情は普通に戻ったが
「あたしが考えてるのは、一人で寝てるとさすがに危ないなって分かったから、夜だけでもこの部屋にいさせてってことなの」
口調は尻上がりで変わりない。
「あんたらとつるむつもりなんてないわけ」
にらむように村井を見る。
「別に俺達と組めなんて言うつもりはないし、当たり前の話をしたいだけだ」
「は?」
「まぁ、聞けよ」
「・・・」
目線を村井に向けたまま森が頷いた。