8月19日-(3)-
食堂で健ちゃんとヒデくんと3人で朝ご飯を食べる。
いちいち気にしないでももう無意識になってるから今もイスの下に置いてあるバッグの中には、昨日美紗ちゃんから渡された美愛のメモ帳が入ったままで、あの後一度も出してない。
ずっと不思議に思ってたことが1個だけ納得できたし、手に取ったり、ヒデくん達にメモ帳を渡されたことを話したりすると、美紗ちゃんと約束してた今日の朝集会の前よりも早く中を見ることになってしまう気がしたから、集会室に入るまでは触ることだってやめようと思ってる。
「美結」
「・・・」
「美結」
「あ、ゴメン、なに?」
またボーッとしてたみたいだ。
「食べ終わってもまだ朝集会には少しあると思うんだ」
「美結は、どうしたい?」
「ああ、うん、どうしようね」
健ちゃんもヒデくんも私の意見を聞いてくれることが多くて、優しい2人には絶対言えないできたけど、ずっとホントは少し困ってた。
うんと小さい頃は違ってたのかもしれないけど、健ちゃんとヒデくんに初めて会ったときの私はとっくに、自分で考えることはしなくなってて、誰か別な人に合わせるようにしてたから。
周りも私がそういう人間だってことに慣れてたはずで、いちいち私の考えを確かめることなんてなかったし、あのときもそうだし、今になっても聞いてくれるのは2人くらいなもんだ。
(あとは、美愛・・・)
「ヒデくんは?健ちゃんは?」
順番に視線を向ける。
「俺は、ギリギリまでここにいた方がいいと思う」
「なんだ?健蔵にしては珍しいこと言うな」
「いや、まだ今日は榮川しか見てないけど、他の奴は来るだろうからな」
「そうか、そうだな。それにまた部屋に戻るのも違う気がする」
「うん・・・」
健ちゃんが言っててヒデくんが別に反対じゃなければ、私は2人と同じでいいし、もうそうするしかない。
(だって)
栞那ちゃん以外には、美紗ちゃん、森さん、村井くん達しかいないんだから。
「じゃあさ、ギリギリの少し前にここを出て、ちょっとだけ早く集会室の前に行こうよ」
2人が美結の考えを聞いてそのとおりにしたって思って安心できるはずだから、少しだけ健ちゃんの言ってたことを変えて、私の意見みたいにする。
「分かった」
「いいよ」
「うん」
それに少し早く行くと、廊下に栞那ちゃんがいるだろうというのもある。
さっきは話が続かなかったし、健ちゃん達と食堂に行く途中だったのもあって短く終わっちゃったけど、今のうちに栞那ちゃんに聞くことを考えておこう。
昨日は3人も裁かれてしまったし、夜集会が終わった後の美紗ちゃんの様子も変だったから、栞那ちゃんにも聞いてみようかな。