8月19日-(2)-
「おはよう」
食堂に行こうと歩いてたら、後ろから声がして振り返る。
「おはよう、栞那ちゃん」
昨日私は栞那ちゃんに、弱音を吐いちゃダメだって強く言われてしまったわけだけど、私だってそういつも能天気でい続けれるわけじゃなくて、昨日もつい自分の役割をすっぽかしてしまったのに、その後に栞那ちゃんの態度は全然変わらなかったし、今日も朝の挨拶をしてくれた。
ここに来る前の毎日は、ただ何となく浮き沈みもなく過ごしてるだけだったからか、ここだと毎日ちょっとしたきっかけですぐ落ち込んでしまう。
でも、今まで同じようなことが何度あったって、今日みたく全然私への態度が変わらないんだから、私が何を言っても、しても、栞那ちゃんには関係ないわけで、私への接し方は栞那ちゃんが決めるっていうなら、それが一番いい。
だって私は大事なことほど自分で何も決めれないから、ずっといつも誰かが決めてくれたとおりにしてきたんだし、きっとこれからも、自分で何か決めたりなんてできないんだ。
「栞那ちゃん、今日はもうご飯食べた?」
「食べた」
「私まだ」
「そう」
「うん」
「じゃ」
「うん」
(良かった・・・)
栞那ちゃんは必要ないことは言わないけど、ちゃんと大切なことなら言ってくれるはず・・・だから、栞那ちゃんがあいさつしてくれたときからドキドキしっぱなしだったけど、栞那ちゃんが言わなかったってことは、私に教えるような何かが1個もなかったんだ。
「今日がまた・・・来た」
「そうだな」
「え?」
「なんだ?」
ひとり言が声に出てたようで、健ちゃんに悪いことしてしまった。
「まぁ、昨日、ほら」
「あれは、美結のせいじゃない」
「ん・・・そうだけど・・・」
「とにかく、ちゃんと気を付けてな。今日もだぞ」
「分かってるよ、ヒデくん」
昨日栞那ちゃんが言った未来という言葉に美紗ちゃんはスゴく反応してたし、夜集会の後もスゴく変な感じだった。
来なくなるまで明日が来るなんて、いくらなんでも、そんな当たり前のことを私が知らないと思ってたわけじゃないだろうから、美紗ちゃんは私に言うのと同じくらい、自分自身にも言いたかったんじゃないのかな・・・
不安だけしか浮かんでこないような美紗ちゃんの後ろ姿を、あれから何回も思い出した。
夜中に届いたメールには、猪戸さんと矢口さんと三田さんの名前しかなかったので、昨日のうちには何もなかったのは分かってたけど、朝になるまでに何かあったんだとしたらと思ってたせいで、栞那ちゃんの話があいさつの後にも続くかどうか、とても怖かった。
でも、栞那ちゃんは何も言わなかったんだし、まだ今日は何もないんだって思ってもいい・・・よね。