8月18日-(8)-
たぶん独り部屋でボーッとしてたのは5、6分。
「前田さん!」
部屋に駆け込んできた声。
「あ・・・」
緩慢にドアの方を見たら、安齊さんの後ろに仁藤くんと鹿生くんが立ってた。
「か、榮川さんに言われて来たの」
安齊さんの感じからすると、愛麗沙が出ていくのを見てたりして、ここであったことに多分気付いただろう榮川さんは、いつもの口調で、あの部屋に行ってあげるといい、とかだけ言ったんだろう。
「・・・そう。こっちを手伝ってよ」
「うん」
「鹿生くんと仁藤くんは、わたしが呼んだら入ってきて」
「ああ」
「じゃ」
奥の部屋につながるドアを開ける。
「っ!」
声にならない叫びみたいなのが後ろから聞こえる。
(・・・)
考えが甘かったみたいだ。
「健ちゃん、ヒデくん、食堂から袋を3つ持ってきて」
まだ閉まり切ってないドアの隙間から隣の部屋の2人に呼び掛ける安齊さん。
「え?」
「えっ、美結?」
後ろの2人からもびっくりしたような声がしたけど
「お願い」
安齊さんはパタンとドアを閉めた。
矢口さんと猪戸さんは声しか聞いてないので、わたしも部屋の有様を見たのは初めてで
(・・・・・)
垣間見た部屋の中のあまりのヒドさに絶句してしまってるうち
「前田さん」
安齊さんは取り出したポリ袋をまずわたしに渡すと、自分の手にもかぶせながらドアを開け、部屋の奥に入って行く。
「・・・」
無言でうなずいて、わたしも手に袋をかぶせて部屋に入る。
奥の珠美佳は独りで仰向けに倒れたままだけど、愛麗沙がドアを閉めたときは離れてた矢口さんと猪戸さんが寄り添うようにドア近くで倒れてた。
(ぅ・・・)
胸がギリギリと痛む。
部屋の中がここまでなってるとは知らなかったけど、3人が裁かれてしまった原因から結果まで全部知ってるわたしなんかより、何も知らないで手伝いに来てくれただけの安齊さんの方が頑張ってるなんて。
(じゃあ、せめて・・・)
矢口さんと猪戸さんの前で膝立ちになった安齊さんの横を通り抜けて、珠美佳のところに行く。
あいつは安齊さんに送ってもらえるくらい、ご立派な人間じゃなかった。
安齊さんの手に触れさせてはいけないし、その手を煩わせることもあり得ないから、わたしが処理するくらいで丁度いい。
「入っても?」
(え?)
安齊さんとわたしとで同時にドアの方を向いた。
(この声、榮川さん?)
わたしよりも入口の近くにいた安齊さんがドアを開け
「いいよ。栞那ちゃんも、健ちゃんもヒデくんも入ってよ」
3人を中に呼び込んだ。
「っと・・・誰なんだ?」
入ってきた鹿生くんに訊かれ、安齊さんは膝立ちのまま
「私のところに猪戸さんと矢口さん」
と言ってから、わたしを見た。
「前田さんのところに三田さんが」