8月18日-(7)-
もし生きる資格ってものがあったって、愛麗沙や珠美佳には縁がないのだし、並外れていい外見で一部の人を引き寄せてきた愛麗沙と違って最初から最後の瞬間まで心の中そのままの汚らしい顔以外に何も持たなかった珠美佳が、愛麗沙に絶望してからブザマな格好で裁かれたこと自体は正直悪くない気分だ。
でも、その後に他の2人まで裁かせたのは、なんで?
「どう・・・して?」
自分でも気付かないうちに言葉がもれる。
「は?」
「わたしだけ・・・なの?」
(え?)
全然別な問いがもれ出て、自分でも驚いてしまった。
「ああ」
愛麗沙は組んでた腕を解いて
「あんた、あたしらの中で一番頭だけはいいし、あたしより落ちるけど、まぁまぁ顔もいいし、あいつらなんかと違ってまだ役に立つからね」
首がまっすぐのままで言ったけど
「・・・・・」
わたしはどう反応するかに戸惑うだけだった。
「うれしくないの?」
「え?」
二、三度左右に顔を振ったので、愛麗沙はガッカリしたんだって気付く。
(そっか・・・)
愛麗沙と過ごす時間が長くなった中で分かったのは、女子が相手だと思ってることや感情が顔、態度、声、言葉にそのまま出る人間なんだってことで、だからきっと今のもそう。
ということは、さっきのは愛麗沙の本心だし、3人を切り捨てた理由。
愛麗沙は結局、アメとムチを使う以外に人の動かし方を知らないんだ。
昨日、わたしをうまく操れたと思ってただろうし、矢口さんと猪戸さんがどうだったか分からないけど、珠美佳なら間違いなく、さっきみたいなことを言えば嬉しがったはず。
でも、自分の価値を愛麗沙に評価して欲しいなんて思ってもいないわたしにとって、見えすいたお褒めの言葉は吐き気よりもヒドく気持ち悪かった。
「・・・・・」
はっきりと首をかしげる愛麗沙。
ここの生活で戸惑うことなんて今の今までなかったかもしれない愛麗沙が、パッと見で分かる困った表情を浮かべてるのは、わたしをどう操ればいいか分からなくなったからじゃなく、どんなにイラついても今日の国王のわたしに手出しできないからだ。
だから安齊さんには感謝してもしても、全くし足りない。
少し前に安齊さんと榮川さんの会話を盗み聞きして、もしかして国王を罵ってもいけない可能性があると知ったわたしは、わざと愛麗沙達にも言いふらしたから、それを覚えてるだろう愛麗沙は、わたしに文句が言えない。
「・・・」
愛麗沙は突然横に飛びのいて
「来ないで!」
わたしを一度にらみつけ、走るみたいに早足で部屋を出て行った。
その様子で、美紗を思い通りにできないなら今日あたしは美紗にかなわない、美紗から逃げなくちゃ、そう愛麗沙が考えたんだってことは、すぐ分かった。