8月18日-(5)-
今は仕方なく愛麗沙達の部屋で過ごしてる。
(・・・・・)
集会が終わってからもしばらく集会室にいないといけないから独りでポツンと座ってるしかなかったわたしのところに安齊さんがわざわざ来てくれて、しかも待機時間が終わったら一緒に過ごそうとまで言ってくれたのに、それを断ってしまった。
だって、居たたまれないから・・・
わたしの一番大事な人を守るのが間違ったことのはずないし、人として正しい行いをするわけじゃなくたって、何日早く手を染めるかの違いで結局いつか犯す罪なんだ、と自分を言い負かしたのが昨日の夕方。
実際に長谷田くんを陥れた後も、後悔よりは思い込みの方が強かったのに、朝集会前の安齊さん達、特に仁藤くんや鹿生くんの感情を押し殺したような変にテキパキした様子を見てしまったせいで、もう後悔しかしてない。
大事な人の今日の命を守れたけど、心はズタズタにしてしまった。
愛麗沙に追い詰められるまでに、もっと何かわたしにだってできることがあったはずじゃ?
待機中、集会室には集まりが3つあった。
バカみたくはしゃぐ珠美佳と愛麗沙達。
何話してるか判らないほど静かだけど和やかな感じの安齊さん達。
固まってるのに話をしない村井達。
そして、一人きりなのに相変わらず平然として見える榮川さんと違って、わたしは消えてなくなりたいような気持ちのまま9時半までを過ごした。
その後は、誘われたわけでもないこの部屋に来てしまってる。
部屋に帰ってきてからも珠美佳は騒々しいし、口にする中身も裁かれてしまった人とか、昨日のこととか、ホント聞いてるうち気分悪くなるようなヒドいものばかり。
「美紗」
「ん?」
愛麗沙が背中を指でつついてきて
「悪いんだけどさ、少しここ立っててよー」
と言うので
「え?」
訳分からないのに言われるまま腰を上げてしまった。
「あかり、広魅、言っといたとおりね」
愛麗沙は、少し離れたところに座ってる3人のうち矢口さんと猪戸さんにだけ声を掛けた。
「・・・・・」
そうすると二人とも無言で立つ。
「1、2、3だよ。珠美佳」
「は?」
「あんたは、ちょっとこっち来て」
「あ、うん」
不思議そうな表情を浮かべた珠美佳がこっちに歩いてくる。
「あ?」
わたし達のところまであと4歩か5歩というところで、なぜか矢口さんと猪戸さんが珠美佳の両腕をつかんだ。
「いっち、にーのー」
「は?え?」
つかまれた本人より、わたしの方が戸惑った。
「さんっ」
珠美佳の腕をつかんでた2人が、同時に腕を離して、しかも珠美佳の背中を思い切り押すのが見えた。
「ぅわ!」
つんのめるみたいして大股で勢いよく向かってくる珠美佳を、わたしがよけれるはずもなくて・・・