8月18日-(3)-
「そこは前に雄生と大翔が2人で使ってた部屋だったよな?」
「そう・・・だっけ?」
今朝もトイレに行ったら栞那ちゃんが入ってきて、長谷田くんのいる所を教えてくれたから、それをヒデくんと健ちゃんにも教えて、長谷田くんを迎えに行くことにした。
長谷田くんを迎えに行くのに袋を持ってなきゃいけないから、今は袋が置いてある食堂に向かってるところだ。
「あの部屋って内側から戸を開かなくできるから、二人でも大丈夫なんだって言ってたな」
「そうなんだ・・・」
私なんかが長谷田くんのいる所を知ってるのは、栞那ちゃんと話したからだって二人とも気づいてるはずなのに、何で美結が雄生のいる所知ってるんだとか、もう聞いてくれないようだ。
「あ」
廊下の角を曲がったら、少し遠くに前田さんと猪戸さんと矢口さんがいて、前田さんだけは私が分かったみたいで、小走りでこっちに来た。
「前田さん、おはよう」
「うん・・・」
だいぶ気持ちが沈んでるんだって分かる。
でも、私だってムリして暗くならないようにしてるわけだし、前田さんだったら私よりずっと感受性が強いだろうから、このくらいになってて当たり前だ。
「あのね、私達、長谷田くんを迎えに行くけど」
チラッと前田さんの顔をのぞき込むと
「・・・わたしも行くよ」
視線を返してくれた。
「うん、お願いね」
「うん」
たたんだ袋を抱えたヒデくんと後ろにいてくれる健ちゃんの間を前田さんと並んで歩いた。
「長谷田くんがどこにいるか・・・もう知ってるんだね」
「うん・・・ここずっと行ったとこの突き当たりの部屋みたい」
「ああ、あそこか・・・」
前田さんは少し顔を右にそらして短くため息をついた。
「榮川さんが?」
「え?」
「長谷田くん、あの部屋だよって」
「うん、まあ」
「そう・・・」
誰かが裁かれた次の日、どこにいるか教えてくれるのが栞那ちゃんだってことは、栞那ちゃんから口止めされてるし、ヒデくんや健ちゃんにも言ったことがないけど、まあ、2人にはバレてるみたいだって思ってた。
(どうして、前田さんにもバレたの・・・)
私は顔とか態度に出やすいから、他の人達にも実はバレてるんだろうかとか考えてるうちに、長谷田くんがいる部屋の前に着いた。
「美結も部屋に入っていいか、榮川から何か言われたんだろ?」
「え?」
ヒデくんは私が栞那ちゃんにいろいろ言われてること前提で聞いてるみたいだけど、今さら何を言っても白々しいから
「ぁ・・・うん、私は入っちゃダメみたい」
正直に答えると
「じゃあ、前田も入れないな。俺と健蔵だけ行くから」
ヒデくんが手の平を上に向けて伸ばしたので
「うん・・・お願い」
持っていたポリ袋とゴムをヒデくんに渡す。