8月18日-(2)-
わたしが今やらなきゃいけないのは、今日の国王として法を決めること。
最初から立候補するつもりがあったし数秒誰の動きがないのを確かめてすぐ手を上げたら、すんなりと決まった。
(昨日あんなことさえ・・・)
あの後まともな精神状態じゃなかったわたしは、法を打ち込めなくなって、それからもずっとできてないから、メールを待ってる人のところに早く法を届けないと。
曽根嶋さんや鈴木さん、それに野村がどんなふうにして裁かれたのか、どうして端末と離れたのか、珠美佳の勝手に自分から説明してくれたので、裁かれてしまった人を責めたくないけど、曽根嶋さんのは、いつのまにか一ノ木さんが端末を隠してしまったせいだって知ってる。
野村のは、榮川さんの引いた赤い線のあっちに放り投げられた端末を拾いに行けなかったってこともあるだろうけど、拾っても一旦端末を離してしまったことを変えれないから、赤い線が悪いんじゃない。
愛麗沙が決めた法のせいで、みんなスゴい注意を払って端末をもってなきゃいけないし、あの法の悪用で3人裁かれた。
(早く打たないと)
スカートのポケットから紙を出して、一言一句間違わないよう端末に打ち込む。
8月18日 @国王の法
~今日の法は【他人の端末に自らの意志で触れない】です。 前田~
もっと早くこういう法があれば、端末がらみで裁かれる人はいなかったはずだ。
夢を見ながら目が覚めてるみたいにグチャグチャな感覚が続いてたけど、朝になって少し意識がハッキリしたので、そぉっと目を開けたら結構もう明るい。
端末の画面を見ると、来てるメールはまだ1通。
長谷田くんの帰りを待ちながら今日になった瞬間メールが届いたので、思わず開いてしまったメールだけのようだ。
(・・・)
あのとき、来たメールが内容は予想がついてた。
健ちゃんから聞いた話だと、昨日の夜、健ちゃんとヒデくんは長谷田くんと3人でシャワーに行ったのに、長谷田くんだけが先にシャワーを終わりにしたみたいで、ヒデくんが出てきたときにはもういなかったらしい。
長谷田くんがシャワー室からどこに行ったのか分からないけど、3人しかいない私達は二手に分かれて探しに行ったりができなくて、部屋で長谷田くんの帰りを待つほかなかった。
でも、夜に姿が見えなくなってしまった人が裁かれてなかった試しはないし
(まあ、栞那ちゃんだけは夜にほとんど見ないけど)
いつまでも長谷田くんは帰ってこないから、私の頭の中では何回も最悪の想像が頭を横切っては消えるを繰り返してた。
そんなことしてるうちに届いた最低のメール。
(長谷田くん・・・)
「!」
急に端末が光った。
たぶん国王の、前田さんの法律が届いたんだろう。