8月17日-(9)-
真っ暗い部屋なのに、目の前で何かまたたいたような気さえした。
(・・・・・)
「いいの?」
下から耳打ちするような声がしたので
「ああ」
つないでいた両手をほどき、並ぶみたいな感じで仰向けになった。
「・・・」
何か言った方がいいのかもしれないとは思ったが、こういうときに掛ける丁度いい言葉が見付からない。
それでも言葉を探してるうちに
(!)
左脚が弾け飛ぶのが自分でも判ったので
「んぅっ・・・」
慌てて手を使いゴロゴロと転がりながら、自分を遠ざける。
転げ止まったあたりで、肩ごと右腕が離れていき、何かしぶきのようものが顔にかかるのが判った。
(そうか)
誰かに傷を負わせたことで、何人も裁かれてしまったけど、それが何を意味してるのか、何の傷を負わせたのか、ちゃんと分かってるつもりだったし、さっきだって、こいつを傷付けないかどうか少しも考えなかったわけじゃない。
だからって今さら訊くのもどうかと迷ってた俺もいたし、歯止めが効かずスルスルと事を進めてしまった俺もいた。
だから、これは俺自身が招いた結果だ。
「がっ!」
左のわき腹が・・・
床に置いた左腕の上に額を載せ、小さく速い呼吸を繰り返す。
(・・・)
今まで何人も見てきたんだ、裁かれると何回爆発するのかを知ってる。
3回だ。
脚・・・肩・・・わき腹・・・
既に俺は3か所いっておきながら、それでもまだ生きてて、もう爆発することがないってのは、スゴく運がいいのかもしれない・・・
勿論、運がいいとはいっても、これからどうなるかは今まで見てきた人達と変わらないはずだから、場所がましだっただけで俺も時間をおかず死ぬわけだ。
(死ぬ・・・俺が?)
これが当たり前かもしれない。
もし独りだったら訳も分からず叫んだり転げ回ったりするんだろう。
守りたい者を最後まで守ることと俺が最後まで生きてることは、絶対両立しないわけで、もしあいつと二人きりになるまで生きていれたら、一ノ木みたいに崖下に向かって飛ぶか殺されるしかないな、というのは何回も考えたから、その時が急に来てしまった。
いろんな想像の中に、間違いなく死ぬだろうって時に俺が独りじゃなかったどころか、よりによってこいつと二人きりでいれるなんてものはなかった。
(ん?)
俺の体勢はうつ伏せになってたはずだが、ほんの少し前から身体が動かない。
というか、身体がどうなってるか、どこにあるかが分からない。
(・・・)
さっきまで暗さに目が慣れて少し見えてたはずなのに、すっかりまた真っ黒に覆われてしまって、目の前が床なのか何なのかも判らないようだ。
(・・・・・)
急になんか・・・眠気みたいなのを感じ・・・る・・・
(・・・・・・・)