8月17日-(8)-
「・・・ここで」
「え?ここか?」
「うん・・・」
「だって、ここは」
「鍵は掛からないけど、ドア開かないようにできるんでしょ、ここは」
「あ、ああ、まあ・・・」
「・・・」
先に立って手前の部屋に入る。
「奥・・・で話そう?」
「ん、ああ」
「・・・」
この部屋にはタイミングを計るためとかいって愛麗沙達が来てしまうから奥の部屋に行かないといけないわけだし、そもそも誰が入ってくるか分からないような部屋でする話でも、することでもない、と自分に言い聞かせた。
奥の部屋に入ると
「つっかい棒、していいのか?」
訊かれたので
「お願い」
そう言ってからドア横の壁際に座る。
「これで大丈夫なはずだ」
ちょっと手慣れた感じで棒を挟むと、わたしの隣に座った。
「それで、話って?」
「うん・・・」
膝を立てて抱え込む。
「もうね、後悔したくないな、って思って」
「後悔?」
「こんなことになって、何人もいなくなっちゃって、自分もいつどうなるか分からないじゃない」
「そう・・・だな」
「言いたいことも、聞きたいことも、したいことを残したくない」
「・・・」
「ゴメン、なんか訳分かんないよね」
「いや、そんなことない。俺もそうだ」
「え?」
「話したいこと、あるんだろうけど、俺が先に話してもいいか?」
「あ・・・うん」
「ありがとう」
「うん」
「・・・っとさ、俺、こんなことの前から、好き・・・なんだ」
「え?それって、わたし・・・を?」
本気でビックリした。
「ああ」
「う、うん」
「俺のことは、どう・・・なんだ?」
(・・・少しシナリオ変わっちゃうな)
「・・・っと、今さらだけど」
言葉を一回切って
「わたし・・・」
かろうじて輪郭だけ判る両頬に手を添えた。
待ってたらいずれ同じことになるかもしれないけど、確実に進めるため、わたしからするのがベスト。
「え?」
ゆっくり顔を近付ける。
「わたし・・・」
精一杯目を見開いて狙いを定めてから
「ちょ・・・」
何か言葉が出てくるより前に、口で口ふさいだ。
(1つめ・・・・)
両手は頬に添えたまま顔をちょっとだけ離して
「・・・わたし、意気地がなくて、結局先に言ってもらっちゃった」
そっと額と額をくっつける。
「でも、今ので、分かるよ・・・ね?」
「・・・」
私に両肩に手が掛けられた。
「なあ」
「はい」
「お互いを一番大事にしたいってことでいいのか?」
「え・・・」
一瞬戸惑ったので
「・・・」
少し間を置いてから、どうせ見えないのに笑顔を作り
「嬉しい・・・こんなに両想いだったんだね、わたし達」
胸に自分の顔を預けた。
(分かられてなければいいけど・・・)
そう思ったところで、わたしはキュッと抱きしめられたので、たぶん大丈夫だったんだろう。
(2つめ・・・)