8月17日-(7)-
あかりと広魅を部屋に残したまま愛麗沙と出てきたけど、愛麗沙が部屋のドアに名前を書いた後、どこに行こうとして歩いてるのか分からないので、後ろにくっついて行くしかない。
愛麗沙がしゃべらないしこっちも振り向かないので、あたしからしゃべりかけるような中身が思いつかない。
(何でだろ・・・)
だからちょっと考え事をする。
やっと愛麗沙は、美紗にも仕事をさせることにしたみたいだ。
それはそれで気を晴らす何かの足しになるかもしれないけど、でもやっぱり、サッパリとスッキリって感じにはなれそうもない。
どうしてさっき、愛麗沙は広魅とあかりに美紗の返事を聞かせることにして、どうしてそれが、あたしじゃダメだったんだろう。
(それに)
今さら美紗に仕事をさせたからって誰をどうするっての?
ずっとあたしらは、自分達が生きれるように仕事をしてきたんだし、そして今あたしらが一番力を持ってるはずなんだから、仕事で仲間にしたり機嫌をとったりする必要なんてないんじゃないか、って思うし、仕事の相手を美紗に選ばせるっていうのも、愛麗沙がまだなんか美紗に気をつかってて、だからあたしらみたいに、あいつと仕事しろとか命令できないのかな、って思う。
今までさんざん勝手気ままで自由に過ごさせてきたはずなのに、まだ仕事を選ぶ自由を残してあげるなんて、美紗と愛麗沙にあたしの知らない約束でもあるんだと思うしかなくて、スゴくムカつく。
「珠美佳」
「え?」
「あたしが書いた名前、見たでしょ?」
「あ、うん」
「さっき言ったとおり、ホントはどっちでもいいんだけど、あんたあれが美紗の選ぶ方だと思ってる?」
「え・・・」
確かさっき愛麗沙は美紗に、選ばない方を教えろって言ったはずだから、あのドアに書いた名前は愛麗沙が思う美紗の選ばないやつの名前なんじゃないの?
「考えてみなよ、珠美佳」
クルッと振り返った愛麗沙は、珍しく笑ってた。
「美紗はさー、選びたい人のために今日まで仕事しないできたのに」
「うん」
「ここまで引っ張っててさぁ、選ばなかった人と仕事するしかなくなったんだよ」
「あ・・・」
(そっか!だから愛麗沙は)
その時あたしにも愛麗沙の考えてたことが一瞬で分かった。
「こんなウケること見れるの、そうそうないって」
「あはははは、そーだねー」
ずっとあたしの中にモヤモヤドンヨリただよってた気持ち悪い感情がどこかへ飛んでったみたいで、何かやっとサッパリとスッキリできた気がする。
(ざまぁ)
こんなキツいこと美紗にさせて楽しいなんて、愛麗沙の最高のザンコクさを上書きして見れたし、あたしだけが愛麗沙のホントの気持ちを教えられた。
あたしはやっぱり愛麗沙の特別なんだ。