8月17日-(5)-
昼ご飯の後に食堂で言われてたから、夕方、愛麗沙達の部屋に来た。
「ゴメンねー、一人で来たの?」
「違う・・・」
図書室で会った安齊さんと仁藤くんと一緒だったから、別に嘘じゃない。
「そ」
「うん」
いつものイスに座って脚を組んでる愛麗沙の前に立つ。
「あんたの仕事が決まったんだけど」
「・・・」
「あの2人のどっちと仕事したらいいかは、まだ決めれないの」
「どっちって・・・」
「あんたならすぐ決めれるだろーけど」
「・・・」
「まあ、あたしにとってホントはどっちでもいいけど、あんたにとっては違うわけでしょ?」
「・・・」
「だからさ」
両足を床につけると、わたしの方へグイッと真横まで傾けた顔を近付けて
「あんたの大事な最初の仕事なんだもん、あんたの夢をかなえてあげたいじゃない」
薄い笑みを浮かべてささやいた。
「え?」
なぜかわたしより先に声を上げて愛麗沙を見たのは珠美佳だった。
「・・・」
「あっれぇー?聞こえなかったぁ?」
わたしが反応しなかったからか、愛麗沙が顔を真っ直ぐに戻したので
「あ、いや、聞こえたけど・・・」
モゴモゴした口調で答えると
「そ」
愛麗沙は満足げに乗り出してた身体をイスに預け戻した。
「じゃ、あんたが選ばなかった方を、そうだなー、広魅がいいかな。あ、でも、あかりが良ければそっちでもいいし、とにかく、どっちかに言っておいてよ」
愛麗沙がしゃべってる間ジーッと私を見てる珠美佳が気になったけど
「選ばない・・・方・・・を?」
今度はわたしが愛麗沙に向かって上半身を乗り出す。
「ふふ」
愛麗沙はイスから立つと
「そうだよ」
横に来て
「もうとっくに決まってるんだから、すぐ選べると思うけど、でも」
私の肩に手を置く。
「あんたみたいな女ってさ、どーせ、どっちを選んだって悔やむんだろーけどねぇ」
「・・・」
「あたしもね、あんたならどっち選ぶのかなって考えてみたんだよね」
息遣いが判るくらい耳の近くに唇を寄せてきた。
「だからさ・・・せっかくだし答え合わせ、しよっか?」
「答え・・・合わせ?」
愛麗沙を見上げる。
「この部屋出たとこのドアの裏」
「・・・」
「あたしがまちがって?あんたの選ぶ方答えちゃってたら、マジゴメンね」
そう言うと愛麗沙は
「それはそれでウケるけど」
一回言葉を切って
「まー、あたしもがんばったからさ」
わたしの背中を1回ポンとした。
「あまり時間もないの。夜集会までにちゃんと選んどいて」
「・・・・・」
わたしの答えなんて今は要らないらしく
「珠美佳、行くよ」
という声が足音と一緒に後ろの方から聞こえてきた。
「あ、うん」
わたしと愛麗沙を見比べるみたいにしてたけど、呼ばれると珠美佳は慌てて愛麗沙のあとを追い掛けた。