8月17日-(3)-
スゴく不謹慎な考えだけど、法の使い方に流行みたいなものがあって、立て続けに同じ法で裁かれる人が出てくる。
他人の物を自分のにしないとか、端末を側から離さないとか、気を付けてれば違反しないで済むから、もう今は使えなくなった法もある。
あたしはそんないろんなことに気が回らないから、そういうのは考え付かなかったけど、新しい法で古い法の使い道をなくしてしまうやり方を考え付いて、実際にやった人達もいる。
そういうのは何となく頭良さげな人達だったけど、でも多分、どんなに頭が良くたって、結局対症療法しかできないんだろうから、こんなことになるよりも前からレヴィア法の中身を知ってたっていう人がいたら、かなわないんじゃないかと思う。
「・・・・・」
いつだったか、安齊さんと話してて、レヴィア法に詳しいんだねと言われたことがあったけど、あの場からいなくなることで突っ込まれずに済んだし、その後安齊さんが訊いてくることもなかった。
あたしに訊いてくるくらいだから、あの時の安齊さんはレヴィア法の中身を知らなかったはずで、それなのにもう訊いてこなくなったっていうことは、単に忘れたとか訊く気もなくなったなんてわけないんだから、他にも元々レヴィア法の中身を知ってる人がいて、そっちから安齊さんは教えてもらったってことなんだろうか。
次々と、もう半分以上の人が裁かれていなくなった。
気が変になった人だって何人もいたんだし、それより何より、一番仲良くしてただろう柚島さんが裁かれてしまったのに、それでも安齊さんが大してショックを受けてる様子をあまり感じない。
まあ確かに、頭良さげな仁藤くんとか、気分を変えてくれそうな鹿生くんとかと一緒だからやってられるんだろうけど、ある程度先が見えてなければ、あんなに普通で過ごせない。
(榮川さん?)
考えてみれば、安齊さんが何故かよく話してる榮川さんから何か聞いてるせいかもしれないような気がしてきたし、もしそれがレヴィア法の中身の大事なところなんだとしたら
(あたし達のアドバンテージが・・・)
せっかくレヴィア法を知ってることで持ってるアドバンテージが、小さくなってしまう可能性が高くなってくる。
大体、森さんからメチャクチャ目を付けられてるのに、あんなにいつも独りぼっちでもワナにはまることもないまま今日もまだ生きてて、誰のことも気にしないで、ここに来る前も来た後も無表情で平然と過ごしてる。
あたしと同じような感性を持ってるはずがない。
だからそうなると、あたしにとって榮川さんは好ましい人間であるわけがないし、いつか必ずあたし達がどうにかすべき人間ということになる。