8月17日-(1)-
この世界の今を選んだせいで
滅び去った別の世界と未来達
朝目が覚めるとすぐ、おそるおそる端末を操作して、朝までに来てたメールを確かめる。
「・・・・・」
国王の法、というメールしかないから、村井くんの作った法律が届いてるだけのようだ。
(ってことは)
昨日、私が知らないうちに誰かが裁かれてしまったということだけはなかったと分かると、ホントにホッとする。
「安齊、起きたのか?」
「!」
急に背中側からかかった声でビクッとする。
「おはよう」
「あ、うん・・・おはよう」
まだ頭がハッキリしてないせいで思わずビックリしてしまったけど
(そういえば・・・)
昨日の夜から長谷田くんが私達の部屋に移ってきてたのを思い出した。
「健蔵も英基も寝てるぞ」
「そう・・・なんだ」
今まで健ちゃんとヒデくんが代わりばんこに起きててくれたけど、長谷田くんと3人交代にしたのも昨日の夜から。
「昨日、何もなかったみたいだね」
「そうだな」
「うん」
「いつもは健蔵か英基が起きたら、朝飯に行くのか?」
「もう少ししてからが多いよ」
「じゃ、起きてから決める感じでいいな」
「うん」
たぶんまだ長谷田くんはムリしてる。
昨日みたいに心がどこかに行ってしまってるとは思わないけど、元々誰かに、特に私なんかに自分からどんどん話しかけるような人じゃない。
それが分かっても私がしてあげれることは何もない。
「英基も健蔵も気が抜けたように寝てるな」
「・・・」
二人とも床で体伸ばして寝てるから、確かに気を張ってるわけじゃなさそうだし、そうやって寝てられるのも長谷田くんがいてくれるからだろうし、健ちゃんとヒデくんにとってホント良かったと思う。
「それって・・・長谷田くんのおかげだよ」
自分が誰かの役に立ててるって言ってもらえるのは悪いことじゃないはずだけど
(でも・・・)
何で長谷田くんがここに来てるのかっていうきっかけを考えれば、いいことだったなんてことまで長谷田くんに言うわけにいかない。
「そうだな」
「?」
声のした方を見ると、健ちゃんがゆっくり体を起こすのが見えた。
「健蔵、起きたのか?」
「ああ、英基より先に寝たからな」
健ちゃんは足を伸ばして座った体勢になると
「・・・美結の言ってたとおりだよ」
腕を上に向けて伸びをしてから
「こんなに寝れたのは、雄生のおかげだ」
立ち上がる。
「そうか?」
「俺と英基しかいないときは、壁にもたれて寝てたからな」
その時、自分に長谷田くんの視線が向いたのを感じて、私は2、3回大きめにうなずいた。
「・・・まぁ、俺が役に立ったなら良かった」
「サンキュー、雄生」
「ああ」
照れたのか素早く健ちゃんと違う方に顔を向けた長谷田くんは、スゴく男の子っぽかった。