8月16日-(8)-
夜集会で明日の国王を決めることになっているわけだが
「誰がやるのかなー?」
今日の国王は森なんだが、何か変なふうに機嫌良さげな様子を見てるとムカムカが止まらない。
「何だ、いないのー?」
ギリッと音がするくらい奥歯を噛みしめ、いっそのこと俺が、と言い出してしまうのを我慢した。
英基とも話したが、俺は2回、英基と健蔵は1回ずつ国王になってるから、まだ1回もなっていない人との選挙になったら勝ち目がない。
それよりは2回目以降を目指す立候補があったら、まだなったことのない安齊に立候補してもらうことになってる。
「だったらもう、オレがやるよ」
立ったのは村井だ。
(村井か・・・)
初めて立候補した村井に、安齊をぶつけるわけにいかない。
でも、昨日のこともあるから、村井は警戒しなきゃならないと思い、チラッと英基を見たが
(・・・)
別に何か言おうともしてなさそうなので、俺もそのまま動かずにいるしかなかった。
森が集会室の中を見回しながら
「村井しかいないんだったら、村井に決めちゃうよ」
と言うと、最初に反応したのは三田で
「いいんじゃない、村井でー」
パチパチと手を鳴らし始めて、矢口とか猪戸も続く。
「じゃあ、明日の国王は村井で決まったから、集会も終わりねー」
森が宣言して今日の夜集会は終わったが、集会が終わってもまだ20分くらいは集会室にいなければならない。
机にひじをついて、両手で頭を抱え込む。
(・・・・・)
昼のうちは何とか別なことも浮かんだが、夜になってしまったからか、こうしてると頭の中を占めるのは大翔のことばかり。
昨日村井達と話をすると言って別れたきりなんだから、大翔のことについて最初に疑うべきは村井達だろうけど、やっぱり一番怪しいのは森達だ。
(それとも・・・)
実は村井達と森達は手を組んでるのか、という考えにとらわれ始める。
(・・・・・)
「長谷田くん」
「・・・」
「長谷田くん」
「!」
少し大きめの言葉にハッとして声の方を見る。
「なんだ、安齊」
「うん・・・また中岡くんのこと?」
「は?」
安齊と同じように英基も健蔵も俺の方を見てる。
「・・・まあ、な」
「うん・・・」
伏し目になる安齊。
「いや、だって、俺のせいだろ?」
「え?」
「ホントのところ何があったか分からねぇけど、少なくとも俺も一緒に行ってれば大翔があんなことにならなかったかも、ってな」
「そっか・・・」
一瞬もっと目線を下げた安齊は、それを少し戻して
「でも・・・分からないし」
と、せっかく言ってくれたのに
「俺が間違ってたってんだって気に、安齊もなってるだろ?」
ついキツい感じの口調で、俺は安齊を問いただしてしまった。
「ぁ・・・」
フラフラッと立ち上がる安齊。