8月16日-(7)-
そんなわたしだけど、何のために生きるのか、やっと決めた。
(一体何だったんだろう・・・)
決めれたら、自分を苦しめてると信じてた悩みのほとんどが、つまらない気の迷いでしかなかったことを思い知らされる。
つい二、三日前まで、その日一日とか明日どうやって裁かれないようにするかで必死になってて、それ以外に目的みたいなものがないままダラダラと生きてたのが嘘みたい。
だからって、いつまで生きていれるか分からないのは、何も変わってない。
それに、気紛れなのか一応ちゃんとした考えがあるのか分からないけど、多くの人の今日と明日に、愛麗沙の振る舞いとか機嫌が間違いなく大きく関係してる。
そういうのを見てれば、珠美佳のようにひたすら愛麗沙にこびを売りまくる生き方だって、自分さえ良ければいいって考え方をするなら、当然有りだ。
実際、珠美佳ほどヒドくないにしても、今じゃすっかり愛麗沙の取り巻きになってしまってる人は何人もいて、わたしだって第三者的に見れば、当然その一人に思われてる。
だからこそ、あいつは森の手下だと見られてるだろう状況を隠れみのにしてでも、わたしが何を考えて何をしようとしてるのか誰にも悟られないようにしなけりゃいけない。
眠りに落ちる前、ブツッ、と音がしたんじゃないかってくらい、自分の中の太い何かが断ち切られる感覚があって今朝を迎えた。
今日最初の数分間のことを思い出してみる。
目覚めの瞬間、わたしと愛麗沙は椅子に囲まれたスペースに二人きりで、愛麗沙は手を伸ばせば届くくらい近くで寝息を立ててるのに、珠美佳達は椅子の向こう側にいたから、わたしは初めて愛麗沙の顔を上からのぞき込んでみた。
(・・・・・)
うぬぼれる必要なんて全くないくらい、わたしから見てもスゴク、何かしたら壊れてしまいそうな感じで、愛麗沙は美しかった。
でも、愛麗沙そのものは、トゲのある綺麗なバラとかじゃなくて、きらびやかな空っぽの容れ物。
その容れ物に詰まった冷たくて甘い味の毒は、きっと美味しいんだろうけど、次々いろんな人を苦しめ、未来を失わせてきた。
そんな毒も、容れ物ごと壊せば蒸発し、消え失せる。
ところが、自分がいっそあのとき壊してしまえば良かったとまで思えない。
愛麗沙は今日の国王だし、軽はずみに勢いだけで、やり遂げれる保証のないことをするわけにいかなかった。
もちろん、毒をそのままにして、わたしの生きる目的を果たせるはずないから、必ずいつか向き合うにしても、その時は今朝じゃなかったと思う。
でもそれは、わたしが呆然と何分も、ただ愛麗沙の寝顔を見つめてたあの時間も正しかった、そう思い込みたいからかもしれない・・・