8月15日-(9)-
明かりのない部屋なので、棒みたいなのを持ってる人影があるのは分かっても、それが三田なのか矢口なのか分からない。
(・・・でも)
今日の国王なんだし、きっと三田だろう。
殴られたのは後頭部だったのに、頭が全部、割れるように痛い。
「あれ?告発はー?」
棒をブラブラさせてる奴から声がするし、俺を殴ったのは、やっぱりこいつのようだ。
「・・・」
ズボンの後ろポケットに入れてた端末を探る。
(あった・・・)
これなら取りあえず今、俺は告発されない。
「・・・三田を告発できねえからな」
「えー、なんでー?」
「・・・」
人を馬鹿にしようとしてる態度が見え見えの三田は、自分が何をしようと誰にも告発されないって知ってるに違いない。
何より、ここから逃げることを考えないといけない。
(痛・・・)
頭の後ろを触ってみるとヌルッとしたから、三田に殴られたところから血が出てると分かった。
(少し・・・か)
今気付いたが、俺は元々ドアに背中を向けて座ってたらしく、この部屋から出るためには棒を持った三田の向こう側に行かなくちゃいけない状態になってる。
(それに・・・)
村井、田月、矢口も三田の近くにいるから、俺が逃げようとしたら邪魔してくるかもしれないし、誰か一人でもドアの前に立ちふさがったら、そいつを突き飛ばしたり、押しのけたりはできないんだ、俺は絶対この部屋から出れない。
(ぅ・・・・・)
自分の状況みたいなのは判っても、この部屋から逃げる方法は、殴られたところが痛んでなかなか考えれない。
「もう1回」
そんな声がしたら、三田だろう人影が棒を振りかぶったように見えたので
「!」
また殴られちゃかなわない
「三田、やめろ」
立って身構える。
(・・・・・)
少しフラッとしたけど、三田が俺に向かって小走りしながら棒を振り下ろしてきた感じだったので、うっすら見える棒を横に動いて避けた。
後ろの壁に何か叩き付けたような音がして、勢い余った三田と俺はぶつかってしまった。
「中岡くん、まだかな」
結構時間経ったような気がしたんだけど
「大翔が村井達と行ってから、まだそんな時間経ってないぞ」
長谷田くんが言うので
「そうなんだ」
それ以上は止めた。
「でも、ホント、俺達を置いて大翔と行った方が良かったんじゃないか」
「まだそんなこと言うくらい、俺や大翔は英基にとって信用がないんだな」
「いや、別にそういう意味じゃ」
マジメすぎるくらいマジメなヒデくんは、長谷田くんの返しにスゴく焦り出した。
(私さえ、皮肉か冗談だって分かるのに・・・)
「分かってる。でも。英基が思ってる以上に、俺は大翔を信じてるんだ」
「あ、ああ、そうか」
「そうだ」
長谷田くんは、大きくうなずいた。