8月15日-(7)-
栞那ちゃんと2人で、いつもの部屋の前に着いた。
「送ってくれて、ありがとう」
私は肩くらいまで上げた手を振ったけど、栞那ちゃんはクルッと後ろを向くと
「・・・」
そのまま廊下の奥へ行ってしまった。
(・・・・・)
月明かりの部屋の中には、健ちゃんとヒデくんの他に長谷田くんもいた。
「ただいま。か、榮川さんとドアの外まで一緒だったよ」
ヒデくんに聞かれる前に、独りじゃなくて栞那ちゃんと一緒だったことを教えて、長谷田くんがいる前では栞那ちゃんという呼び方をしなかった。
「そうか」
「うん。3人で話してたの?」
「まあな。でも大体終わった」
「そっか・・・あのね」
すぐ確かめたかったし、長谷田くんがいても聞いてしまうことにした。
「ヒデくん。榮川さんが、国王はフカシンって言ってたけど、何だろ?」
「また、榮川か・・・」
つまらなそうだ。
「最初からあった法で、そうなってたな」
「それって、つまり?」
とっくにさっき私だって気づいたのに、それでも右にいたヒデくんに向き直って聞いてしまう。
「国王に対して何もできない、何かしただけで法に違反するってことだ」
「・・・触ったりも?」
おそるおそる聞いてみると
「あり得ない話じゃない」
ヒデくんが即答。
「・・・」
天井を見上げて、ホーッとため息をついてしまう。
「安齊、それだけじゃないんだ」
「え?」
今度は、長谷田くんの方を向く。
「法は臣民に適用されるというのもある」
「・・・ん」
「ということは、国王には法が適用されない」
「ん?」
すぐに理解できなくて首をかしげてしまったら、長谷田くんは私がそうなることくらい予想してたようで
「国王が何をしても法に触れないし、国王は絶対に裁かれない。そういうことだよ、安齊」
私に言ってるんだって分かるように、目を見て説明してくれた。
「え・・・」
スーッと視線をヒデくんの方に移すと、ヒデくんがうなずいたように見えた。
(・・・・・)
途端に歯がガチガチ音を立てる。
当たり前だけど、寒くなんてないし、震えを止めれないだけ。
(怖い・・・)
今まで誰を王様にすればいいかなんて考えなかったし、気軽に王様を決めちゃいけないなんて思いもしなかった。
私達の決めた王様は、やりたい放題できるって知らなかったから・・・
でも、最初からの法律なんだし、私達は、それが前提の生活を送らなきゃいけなかった。
(他のは何だっけ・・・)
今は思い出せないし、たとえ読み返したって、頭の良くない私だ、ホントの恐ろしさが分かるはずもない。
きっといろんな抜け道が、もっともっといっぱいある。
そういうのに気がつく人が、私みたいに気がつかない人を狙ってる・・・ってことなの?
(誰が・・・)
(誰を?)