8月15日-(5)-
夜集会が終わって、集会室を出ようとしたら
(あ・・・)
いつもどおりさっさと出て行ってしまってたはずの栞那ちゃんが、集会室の方を向いて廊下に立ってるのが見えた。
私はどっちのことを栞那ちゃんに聞きたいのかって、お昼ご飯のときに会えれば聞こうと思ってた。
でも、朝ご飯のときと同じで栞那ちゃんには会えなかった。
だからもう、ここで聞かないと明日までモヤモヤした気持ちを持っていかなきゃいけなくなる。
振り返って集会室の中を見ると、ヒデくんと健ちゃんはリュックを肩にかけようとしてたから、もう間もなく出てくるだろう。
一歩ずつ、そろそろと集会室を出る。
栞那ちゃんに近づいて
「栞那ちゃん、朝集会の前に話してたこと、今聞いてもいい?」
一気に言い切る。
「うん」
即答。
(もしかして、私が出てくるの待ってくれたのかな・・・って、それはムシが良すぎるか・・・)
「美結」
そのとき丁度、健ちゃんが私の後ろまで来てたみたいで
「行くぞ」
言いながら手では、おいでおいでをする。
「あ、ゴメン健ちゃん、少しだけここで栞那ちゃんと話すから、ヒデくんと部屋帰っててもらっていい?」
「ああ、別にいいよ」
健ちゃんはチラッと栞那ちゃんを見たけど何も言わないで行ってしまって、でもヒデくんは
「美結を頼む」
栞那ちゃんに声をかけていった。
私達以外周りに誰もいなくなったのを確認してから、栞那ちゃんを見上げる。
「どっちだか、私、分かったよ」
「・・・」
「まず聞かせて欲しいのは、一ノ木さんが殺されたんだって、どうして栞那ちゃんには分かったのかってこと」
「そう」
「うん」
「断定は、できない」
「うん」
「条件を備えた者の殺害と想定すると最も合理的」
「条件を備えた?」
「・・・」
「そんなのって、誰が・・・」
私にしてみれば独り言みたいなつぶやきで、栞那ちゃんに聞いたつもりじゃなかったけど、栞那ちゃんは質問に聞こえたんだろう
「綿谷だ」
思いがけず、いきなり名指しした。
「え!」
だから声が裏返ってしまった。
「・・・どうして一ノ木さんを殺した人まで分かるの?」
突き刺さってくるんじゃないかっていう視線か動作も表情もない無言の反応を覚悟して、でも栞那ちゃんから顔をそらさないようガマンして聞いたけど
「・・・」
栞那ちゃんの方が逆に私から少し視線を外してしまった。
そして私の斜め後ろ辺りを見てるような目つきで
「裁かれずに殺す方法」
私の顔の真ん前に左手の指を一本立てる。
「殺して裁かれない方法」
さらに指をもう一本。
「やり方が二つってこと?」
栞那ちゃんの言いたいことを想像して聞くと、栞那ちゃんが小さく頷いた。