8月15日-(3)-
一ノ木さんを手にかけた犯人じゃなければ、裁かれるのも殺されるのも、亡くなった本人にとって命を失ってしまったことに変わりない。
それに、殺される理由なんて、一ノ木さんでも犯人でもない私には関係ない。
だから、私は一ノ木さんが殺された理由を優先して知りたいんではないんだ、ってすぐに気づいた。
つまり、せっかく答えてもらえるんだったら、栞那ちゃんが一ノ木さんは殺されたと結論づけた理由が先。
(そっか)
自分の頭の中が整理できて、少しホッとした。
集会室の時計を見たら、たぶん1分くらい8時50分を過ぎてるようだったので、中に入ると、栞那ちゃんがいつもの席に座ってた。
朝集会が終わって栞那ちゃんに話しかけれるようだったら、どうして一ノ木さんが殺されたと分かったのか聞いてみよう。
(・・・・・)
朝集会の時間が近くなったので、たぶんもう来れる人は集会室に来てるはずだ。
でも、一番右の列の前から3番目は空席。
そこは、ホントの一番最初に一ノ木さんが座ってた席。
そして、その後もずっと一ノ木さんが座り続けてた席。
(そういえば)
ホントの一番最初、私は一ノ木さんの前の席に座ってた。
私の前が藍川くんで、藍川くんの隣は栞那ちゃんで、栞那ちゃんの後ろが佐藤くんだったことも思い出した。
あの日、栞那ちゃんが、すぐ近くに座ってた私と一ノ木さんに声を掛けてくれてたから、建物の中を調べるために3人でグループを作った。
私だけがペラペラしゃべりながら、3人で建物の中を調べた。
ここに来る前も、来てからも、あんまり話したりすることはなかったけど、一ノ木さんとは一緒にいることも結構多かったし、ああして席が空いてるのを見てしまうとスゴくイヤな気持ちになる。
「集会、始めるよー」
前に立って部屋の中を見回してた三田さんが言う。
三田さんは今日の国王だ。
夜中に端末を見たときから、今日の法律が、午後7時40分から午前8時50分の間は自分から5分以上集会室に入らない、となってることは知ってる。
昨日綿谷くんが決めた法律と基本的におんなじで、集会室に入っちゃいけない時間が、綿谷くんのは朝集会から夜集会の間、三田さんのは夜集会から朝集会の間って違いがあるだけだ。
でも、昨日まで私は8時半過ぎには集会室に来てたし、栞那ちゃんは私が来る前から集会室に来てるのが普通だったし、さっきの栞那ちゃんも早く部屋に入ることができないから、窓際で時間になるまで待ってたんだろう。
私は感じないけど、昨日までの栞那ちゃんは集会室に早く来てることが多かったわけだから、そんな栞那ちゃんにしてみれば、三田さんとか綿谷くんが決めた法律のせいで、不便になったって感じるのかな・・・