8月15日-(2)-
朝ご飯のときには栞那ちゃんを見つけれなかったけど、朝集会だからと集会室に行ったところ、廊下の窓際に立ってガラスの向こう側を見てるみたいな栞那ちゃんが目に入った。
「私、おはようって言ってくるね」
健ちゃんとヒデくんに言うと、窓際に向かった。
「おはよう、栞那ちゃん」
「おはよう」
窓の方を向いてたのに、すっかり私の方を向いてくれた。
「今日は雨降ってるけど、また雨を見てたの?」
「いや」
「そっか」
「・・・」
クルッと背を向けようとするので
「あ、ゴメン栞那ちゃん、ちょっと待って」
引き止めたら
「なに?」
また向き直ってくれた。
「あ・・・っと、一ノ木さんのことだけど」
「メールを見た」
栞那ちゃんから返事があったので、もう少し話を続けても大丈夫なのかと思った。
「裁きに因らないって方に一ノ木さんの名前あったじゃない」
「・・・」
「あれって、今まで何のためにあるのかなって思ってたの」
「・・・」
「裁きに因らないって、何なんだろうね」
「何、とは?」
「え?んーっと、一ノ木さんの亡くなり方っていうのかな、そんなことだけど」
「裁きではないから」
栞那ちゃんは唇の前に手の甲を持ってきて少し目を伏せ
「事故も自殺も可能性はある」
と言ってから手を下ろし、スゴく声を落として
「最も大きいのは・・・」
栞那ちゃんには珍しくタメみたいなのを作ったので
「な、なんだろ?」
胸がイヤな感じでチクッとするのをガマンして聞くと
「殺された可能性」
いつもどおり、あくまでも素っ気なく言い切られた。
「え!」
大きな声を出してしまう。
「・・・・・」
もちろん栞那ちゃんの表情は全然変わらない。
「・・・」
頭の中をグルグルと思いが駆け回って、10秒くらいしたらやっと意味のある形になったので
「ころ・・・され・・・た?」
小声にして聞くと
「・・・」
無言でうなずく栞那ちゃん。
「・・・なん・・・で?」
これは無意識にこぼれた言葉。
「可能性の理由?」
「え?」
「殺される理由?」
「あ・・・」
(っと、どっちだろう・・・)
何となく言ってしまったことに栞那ちゃんがスゴくマジメに反応してくれたので、急いで自分と向き合わなくちゃいけなくなった。
まっすぐ栞那ちゃんと見つめ合ったまま、数秒黙ってしまった。
「・・・」
栞那ちゃんが私から視線を外す。
「ぁ・・・」
(行かれちゃう・・・)
「あの、まとめてから、考え、栞那ちゃんには、聞いていい、理由を」
しどろもどろで出た私の言葉に
「分かった」
栞那ちゃんは、ゆっくりと後ろに向きを変えて、集会室の入口近くへ行ってしまった。
(んー・・・)
まず、どっちを私は知りたいんだろう。
落ち着いて考えてみると、答えなんかすぐに出た。