8月14日-(8)-
健ちゃんとヒデくんと一緒に食堂に来た。
お昼、二人は食欲なさそうなのが結構心配だったし、もしかしたら私が二人にムリ言ってでも食堂に行ってもらわなきゃ、と考えてたせいもあって、ご飯に行こうと誘ってくれたのが健ちゃん達の方からだったのにホッとしてる。
(あ・・・)
食堂に入ると、まず目に入ってきたのは栞那ちゃんの姿。
何を食べるか選んでるみたいだ。
栞那ちゃんの横に立つ。
「何にするの?」
「・・・」
栞那ちゃんは私に答えてくれなかったけど、機械を見れば光ってるボタンで何を選んだのか分かる。
「から揚げ、ご飯、スープね」
「・・・」
自分でも選んだことがあるので、スープはコーンスープ以外出てこないのは知ってたし、今まで何回か見たところ野菜料理を食べてることが多かったような気がする栞那ちゃんのことだから、その他にもきっとフルーツジュースを飲んだりするんだろう。
メニューを選び終わった栞那ちゃんが料理の出口に行こうとしたので
「栞那ちゃん」
呼び止めるように声をかけた。
「なに?」
(やっぱり、こういう返事はしてくれるんだ)
「うん、あのね」
私も栞那ちゃんの同じメニューを選んでから
「席に着いてから話すよ」
と言うと
「分かった」
栞那ちゃんはスタスタと料理の出口に行ってしまった。
「美結は榮川と食べるのか?」
「ああ、うん。ヒデくんは健ちゃんとで」
「そうするよ」
「うん」
ヒデくんと健ちゃんから結構離れた席に栞那ちゃんと隣り合わせで座る。
「栞那ちゃん」
私達4人しか食堂にいないけど、何となく小声になってしまう。
「なに?」
「野村くんについて、教えてくれてありがとう」
「・・・」
「栞那ちゃんが言ってたとおりの場所にいたのを鹿生くんと長谷田くんが見つけてくれたし、その後のことも私は野村くんを見ないままでいれたよ」
「そう」
栞那ちゃんの表情は全然変わらないけど、たぶん私が野村くんを見ないで済んだことを良かったと感じてくれてると思う。
「栞那ちゃんは、野村くんがあそこだって、いつ知ったの?」
「・・・」
無言なので、話題を変える。
「から揚げとスープって、意外に合うよね」
「うん」
「私、栞那ちゃんはフルーツジュースも飲むんじゃないかなぁーって思ってたけど、グレープフルーツのだったね」
「そう思っていた?」
「うん、外れだったね」
栞那ちゃんは、答えたくないこと、答える必要のないことには答えてくれない。
でも、答えてくれなかったからって、聞いて悪いことだったわけじゃないというのも分かってきた。
何を聞いても大丈夫だけど、何を答えるかは栞那ちゃんが決める。
(それでいいんだ)
栞那ちゃんと話をするときの私の中の約束なんだから。