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LEVIATHAN~Sodalis~  作者: 黄帝
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8月14日-(6)-

 あたしとあかりは留守番してただけだから、森や三田達と部屋を出ていったきり野村が消えたのに関わってなんかいない。

 そのことをあかりと話したわけじゃないけど、あたしもあかりもそんなバカじゃないんだし、昨日の夜集会に来てないってだけで、森と三田が野村を切り捨てたんだってすぐ分かった。

 野村は何一つすぐれたとこもないのに、何か自分があたしらより上の立場みたいな勘違いをしてるくらい、少しイタい人だった。

 でも別に口も悪くなかったし、放っておくと危なかったりジャマだったりってほどの人でもなかったから、昨日で切り捨てなくちゃいけなかったわけじゃないと思う。

 もし、いてもいなくてもいい人がいちゃダメって思われてるんなら、あたしだってダメかもしれない。

 仕事の役に立ててるうちは切り捨てられたりしないだけなのかな・・・

 部屋の奥の、ひじ掛けのついたイスと一ノ木さんを見る。

 お昼を食べて食堂からここに戻るとき

「一緒に部屋帰ろ」

と言うのでうなずいたら、一ノ木さんはずっとついてきて、そのままあたしと同じように部屋に入ってきた。

(何で?)

 考えるまでもなく、一ノ木さんは昨日までずっと、朝から夕方の時間は別行動だった。

 だから、こんな来たくもないだろう部屋に自分から寄りつくこともなかったし、あたしも夕方三田達が迎えに行って一ノ木さんを連れてくるのが当たり前だと思ってたから、昼過ぎから部屋に入ってきただけで、もちろん少しだけビックリした。

 それより何より、いつも森が使ってるイスに座った一ノ木さんを見て、あたしの方が怖くなった。

 森以外誰も座らないイス。

 そこに座った一ノ木さんは、手に持ってたバッグをしっかり胸に抱え込むと、なぜか鼻歌みたいな音を出しながら、目をつぶった。

(昼寝?)

 今にも森か三田が来て、一ノ木さんは怒鳴られて追い立てられるんじゃないってハラハラしながら見てたけど、なかなか2人は来ないままずいぶん時間が経った。

 その間何回か、一ノ木さんに声をかけたけど、うるさそうにうなるだけだったし、眠ってしまったのか、しばらくして反応さえなくなった。

 「あ!」

そのとき、入口の方から声がしたのでそっちを見たら、三田と、その後ろから森が部屋に入ってきてた。

「あんた、ちょっと」

勢いをつけて一ノ木さんに向かって行こうとした三田を

「珠美佳ぁ」

森が呼び止めた。

 不思議そうに振り返る三田に森は

「梨加子、寝てんじゃん」

と言って

「起こしちゃダメ」

クルッと回ると、部屋を出て行った。

 「え?あ?ちょっと」

慌てて自分も出て行く三田。

 結局、あたしはあたしで不思議な気持ちのまま、また一ノ木さんと2人きりになってしまった。

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