8月14日-(5)-
お昼のとき、しつこく、とにかくしつこく食い下がったので、やっと健ちゃんが簡単に教えてくれたのは、野村くんのあまりにもひどい様子。
壊れるのが体に集中して、言葉どおり四方八方に飛び散っていたらしい。
外だし、全部拾い集めたりしないで、体の大きい一部を袋に入れただけで終わらせたんだって・・・
栞那ちゃんに言われたとおり、野村くんの見送りを健ちゃん達にお任せしたから、私は見ないで済んだけど、私に教えてくれるくらいだし栞那ちゃんは野村くんを近くで見たんだろう。
しかも、誰よりも野村くんの様子がひどいと分かるんだから、栞那ちゃんは昨日まで裁かれた人全員を確かめてて、一人ひとりの様子を覚えてて、それを思い出して比べれるのかもしれない、ということに気づくと、のんきな私でさえちょっと怖い。
怖いといっても、あまりに冷静というか心の強すぎる栞那ちゃんがっていうんじゃなくて、来るだろうその時に、自分がどうなってしまうの?という怖さ。
まあ、私を見つけるのが栞那ちゃんなら、誰に対しても同じように私の様子を細かく確かめてから、裁かれ方のヒドイ順みたいなのを入れ替えるだけだろう。 今までの毎日からすれば、そのくらい裁かれるのが少しも特別なことじゃなくなった。
だからこそ、クラスメートなんだし、そのくらい当たり前だと思って、裁かれてしまった人の顔をキレイにしてあげたり、手足を普通の場所に戻して拭いてあげたりしてきた。
そういうことしてる間は何も考えないで、何の気持ちも持たないようにしてた。
そうじゃないと、とても作業に耐えれないし、後で思い出してしまうから。
誰の様子も覚えてたくないし、誰にも私の様子を覚えてほしくない。
栞那ちゃんがいろいろ話してくれたのを聞いてて、健ちゃんやヒデくんが私を気にしてくれたりするから、今日をむかえることができただけ。
頭も良くない、自慢できるような体力とか運動神経もない私は、うっかりして学校でもどこでも失敗ばかりしてきた。
私は私のまま、変われてない。
今この瞬間、私の番が来てしまったら?
私の番が来た後、誰かが私を見送ってくれるかもしれない。
だけど、もちろん私を拾い集めるとかって感じの迷惑をかけたくないし、どうにかなってしまった私の様子は誰にも見せたくない。
誰も知らない場所、誰にも見れない場所で裁かれることって、できないのかな?
それができるなら怖さは減るけど、私なんかに裁かれるタイミングとか場所を選べるわけない。
それに、できるって分かってても、やれるかどうかは全然別。
でも、やれる可能性があるって知ってれば、フワフワしたこの気持ちだって少しは落ち着くかもしれないよね・・・