8月14日-(1)-
水の漏れない網で
魚なんて獲れない
朝、メールの受信音で目が覚める。
(・・・・・)
音の種類と届いた時間で分かるくらい、見る意味なんてないメール。
昨日わたしは図書室を出てから安齊さんと歩いてて、たまたま猪戸さんと矢口さんが留守番をしていたとき部屋の前を通りかかったので、愛
麗沙達がいないのが珍しいと思ってどこに行ったのか聞いてみた。
猪戸さんが外に行ったと教えてくれたけど、赤い線なら昨日もう見てるし、愛麗沙達のいるような所に近付きたくなかったので、安齊さんに食堂行こうって言ったら賛成してもらえた。
食堂には、わたし達より先に図書室を出てた舟山さんと一ノ木さんがいて、たぶんあれから食堂に直行したんだろう、二人でお茶を飲んでいた。
わたしと安齊さんもお茶を飲むことにして、わたしは麦茶、安齊さんは緑茶をにした。
この生活であえて快適だっていえるのは、食堂では料理があったかく出てくるし、お茶とか普通だと冷たいだろう食べ物がちゃんと冷たく出てくるっていうところと、シャワーでお湯も水も使えるところ、そのくらいしかないから、夏だし昼は暑くって、ついよく食堂かシャワーに行くし、朝とか夕方だったら図書室に行く。
鹿生くんとか仁藤くんとか男子の人達何人かは体育室みたいな所にも毎日行って使ってるようだけど、わたしはそんなに進んで身体を動かしたい方でもないから、シャワーがすぐ浴びれるとはいっても、わざわざ運動して汗かいてしまうようなことはしてない。
(・・・気のせいじゃなければ)
食堂でお茶を飲んでいたら、窓から愛麗沙達がエントランスに向かって歩いてくるのが見えて、愛麗沙も三田も、なんか楽しそうだったのを思い出した。
そのときは、まあ、愛麗沙みたいな立場にいれば怖いものもなくて沈んだ気持ちになんかならないだろうし、三田だってわたしよりはマシな境遇なんだから、笑うときくらいあるだろうと思ったけど、今考えてみると、あの五人は外でなんかしてたのかもしれない。
昨日の夜集会に野村くんが来なかった。
集会に来れない人は裁かれてしまってるんだって、もうある意味みんな分かってるから、前だと集会が終わった途端飛び出していったりしてた人達も、そんな感じじゃなくなってて、電灯が点けれるのが集会室と食堂とシャワー室だけだし、夜集会の終わる7時半だと建物の中はほとんどが真っ暗なのもあって、昨日の夜のうちに野村くんを探しに行った人はいなかったような気がする。
わたしもそうだった。
(朝になってからで・・・)
と思ってたし、こうして今さっき届いたメールの中身だって、野村くんが裁かれたってことが書いてあるに決まってるんだ。