8月13日-(9)-
朝集会が終わった後,食堂に行って,午前中だいぶ英基や大翔,健蔵と話をした。
今日の話し合いは大翔と二人で話すのと違って結構いい感じだったが,それは主に英基が勘所を押さえた議論をしてくれることと,男なのに人の気持ちへの気付きが多い健蔵もいてくれたことのおかげだっただろう。
そのまま4人で昼飯も一緒に食っていたら,安齊が一ノ木や舟山と食堂に来て,俺達から少し離れた所に座り,昼飯が終わったら出て行った。
その後,安齊達と入れ替わるみたいにして森達が食堂に来たので,俺達は食堂を出ることにした。
廊下を歩きながら,ふと思い出した。
(誰が要るとか考えたことがあったっけな・・・)
何だか数年前とさえ感じてしまうが,それだけ極悪な意味で毎日濃く過ぎているということなのかもしれない。
あのとき俺が頭の中に浮かべた名前や顔は,恐ろしいくらい的を射ていて,でも当然,全く誇らしい気分になれない。
「このあと,どうするんだ?」
「ん?」
健蔵に訊かれて,少し考える。
(そうだな・・・)
食堂で大体の話はできたので,場所を移してさらに話すこともない。
「英基は?」
「俺は部屋に戻って昼寝だな」
「昼寝?」
「夜に健蔵と交代で起きてるから,昼飯食った後は結構眠くてな」
「そうか」
俺と大翔が移った部屋は,内側の戸が引き戸になっているので,棒を挟んで開かないようにしておいて夜普通に寝てるが,英基や健蔵の部屋は外側も内側も内開きのドアなので開かないようにはできない。
それに,英基達の部屋には安齊がいる。
男二人とは違って,安齊は何かあっても抵抗する力がない。
そう考えれば,いつもどっちかが起きてた方が,何があってもすぐ対応できて安心だろう。
「昼寝といったって,やっぱり交代なんだろ?」
「ああ,まあな」
「だったら,俺と雄生も行っていいか?」
「え?」
「俺と雄生が起きててやるから,健蔵と英基は寝てろよ」
「ああ,そうだな」
大翔の提案に俺も乗る。
「そうすれば,英基達二人が交代で起きてるよりずっと長く休めるじゃないか」
「んー・・・」
俺と大翔の顔を代わりばんこに眺める英基。
「気にすんなよ。俺も雄生も夜は普通に寝れてるんだから」
「そうか?」
「ああ,大翔の言うとおりだ」
「まだまだ疲れ切るわけにいかないぞ,英基」
「・・・じゃあ,来てもらうか?」
英基は大翔の一押しで決心したらしく,健蔵の方を見る。
「分かった」
健蔵も頷いた。
「よし,じゃあ英基達の部屋に行こう」
「ああ」
俺達は,まだもっと支え合える。
自分しか信じなければ誰とも協力できないし,夜満足に寝ることも叶わない。
だから,信じた奴等とは迷わず支え合うのが正しいはずだ。