8月13日-(6)-
朝集会の後の待機時間みたいなのも過ぎたので、フッと右後ろを振り返ると、まだ栞那ちゃんがいた。
「美結、どこ行くんだ?」
中腰みたいになって立った私を見たヒデくんに聞かれたので
「っと、舟山さんと一ノ木さんと図書室に行くことになったの」
と答える。
「気を付けてな」
「ありがと」
健ちゃんにお礼を言ってから
「じゃ、行こ」
一ノ木さんと舟山さんに声をかける。
(?)
廊下を歩き出すと、2人一緒じゃなくてバラバラにだけど、後ろを歩いてくる栞那ちゃんと前田さんに気づいた。
この建物の中は行けるところがそんなにいっぱいないから、私達についてきてるわけじゃなく、たまたまあの2人も図書室に行こうとしてるだけかもしれない。
図書室に着いた。
「舟山さんって本が好きだよね」
「・・・まぁ」
「学校だと図書委員じゃなかったよね?」
「委員だと、貸し出しの仕事あって自由に読めないからねぇ」
なぜか、一ノ木さんが私に答える。
「あ、そうなんだ。だから一ノ木さんも図書委員にならなかったの?」
「うん」
「・・・・・」
舟山さんも黙ってうなずく。
「安齊さんは、どんな本探してるのぉ?」
集会室を出るときからピッタリ私の横にいる一ノ木さんに聞かれたので
「ああ、うん、あまり難しくないのを」
苦笑いする。
「そっかぁ」
コクコクと首を動かす一ノ木さんは、なんかちょっと明るい感じがする。
(私と一ノ木さんって、打ち解けれたのかな?)
まあ、気軽におしゃべりができるようになるのは、きっといいことだ。
「そういえば安齊さん、覚えてる?」
「なにを?」
「うちのクラスの図書委員って誰だったっけ?」
(え・・・)
「っとぉ・・・」
「うちのクラスの人はぁ・・・」
一ノ木さんは本気で思い出そうとしてるみたいだけど
「あの、もういいって、そんなの・・・」
私が分かってたことを舟山さんも覚えてたみたいで、一ノ木さんの服を軽く引く。
「あー、そっか、うちの図書委員は柚島さんだった」
「ぁ・・・」
ため息のような声を出してから、舟山さんが私を見る。
「あ、うん」
一ノ木さんに悪気なんてないの分かってるし、舟山さんの気持ちもありがたかったから
「そうだった、美愛だったっけね」
この話を終わりにしようとした。
「うんうん」
一ノ木さんの唇の端が少し上がったから、気が済んだみたいだ。
「ありがとう、舟山さん。私、大丈夫だから」
舟山さんを向いて軽く頭を下げると
「・・・ん」
ホッとしたような顔。
うちのクラスに1人だけの図書委員だった美愛。
一見そんなふうには見えないのに、美愛は中学のときから図書委員の仕事が気に入ってて
(去年も今年も進んで委員になるくらい好きなんだ、って言ってたな・・・)