8月13日-(3)-
大翔と二人で食堂に来る途中、安齊を連れた英基と健蔵に会ったので、食堂で待ってると言って、大翔と真っ直ぐここに来た。
大翔が俺の分も水を持ってきてくれる間、端末の画面を見る。
(・・・・・)
昨日は裁かれた人がいなかった。
でももう、この生活でいう国民の数が20人切ってしまってる。
とんでもなく恐ろしい。
前の月まで同じ教室で過ごしてたうちの10人超える人間が、生きてないんだから。
8月13日 @国王の法
~今日の法は、【法の違反を告発された者は他の者を告発できない】とします。 田月~
今日の法は後ろ向きだ。
まあ、でも、一度に何人も破滅しないためには必要な歯止めかもしれない。
何たって、もうとっくに、自分の身を守るのが最優先な状態になってしまってる。
いちいち別な誰かを見張ってるなんて余裕はない。
だから、わざと違う奴の持ち物を混ぜたり、力づくで端末取り上げたり、そんな勝手なことしてる奴を止めることができないでいる。
(奴、じゃあないか・・・)
実際一人でできることなんてたかが知れてるんだし、誰かを陥れるために示し合わせてなければ、こうも次々裁かれるように仕向けられるわけがない。
(奴・・・らか・・・)
今日は13日だから、こんな生活が明日で2週間。
ここに来るまでに俺達は、ただ机を並べる関係以上になってたんだと思う。
だから、俺達は学校で同じクラスだっただけあって、最初の日から赤の他人同士とは違う動きができてたはずだ。
でも実際には、最初の日から佐藤と根津が裁かれるようなことになってしまってるから、気持ちはバラバラだったのかもしれない。
ここに来るまでの俺達は、ただ単に同じ教室にいただけだったんだと思う。
お互いの心の底が全然見えないから、気を抜いたらどんなことをされるか分からないし、気を抜かず他人の動きを見ていなくてはいけなくなってしまった。
ここに来なくても俺達は、ただお互いを牽制し合う関係だったんだと思う
前は、家と学校を往復しながら、ほとんどは独りで取り組む課題ばかりやらされてたけど、今は、誰かかれかと四六時中一緒に過ごして、いろんなことに立ち向かっていくしかない。
ここに来なければ俺達は、ただ時間だけを共有する関係だったんだと思う。
俺達それぞれ、俺達の中の一対一は、もしかしたら、俺には思い付かないくらい強くて硬く繋がってるのかもしれないが、俺が思ってるより脆くて緩い結び目しか持たないのかもしれない。
(どっちだ?)
ここの見極めを間違うことはできない気がする。
俺の横に大翔が、俺達の向かいに健蔵と英基と安齊が座ったのを見届けてから、真正面の英基に問い掛ける。
「俺達は、どうするのがいいと思う?」