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LEVIATHAN~Sodalis~  作者: 黄帝
123/267

8月12日-(10)-

 「また会ったね」

舟山さんと一ノ木さんと3人でシャワー室に来たら、ちょうど浴びて出てきたみたいな栞那ちゃんがいたので声を掛けた。

「・・・・・」

栞那ちゃんは私の方を見てくれてるけど、無言のままだ。

(どうしよ・・・)

 夜集会のとき、栞那ちゃんの左の手の甲に引っかき傷のようなものがあるのを見た。

 ここに来てからも基本あまり肌を出さない栞那ちゃんが、なぜか今は男物みたいに大きなTシャツを着て、下着くらい履いてるだろうけど、ももの半分から下は全出しなので、両腕と両脚にも結構同じような傷が何本もあるのが見えてしまった。

 朝に栞那ちゃんと話したとき、傷があったかどうか分からない。

 でも、なんか新しい傷みたいだから、今日できたんじゃないだろうか。

 聞いたってきっと栞那ちゃんは答えてくれないし、傷のことは言わない方がいいんだろうけど、だからって気づかないふりとか、無視するとかっていうのも何か違う気がする。

(・・・・・)

 私が迷ってる少しの間に、栞那ちゃんは腕と脚を服で覆ってしまうと

 「お休み、美結さん」

私と一ノ木さんの間をすり抜けていく。

「あ、うん、お休み」

 結局また何もできなかった。


 「んー・・・」

シャワーを浴びながら、栞那ちゃんに傷ができたわけを考える。

 そうすると思い出すのは、鈴木さんを見送るため、赤い線から少し離れた右側をリヤカーでたどってたときのこと。

 前の方を確かめるため、長谷田くんとヒデくんは少し先を歩いてて、健ちゃんと中岡君が引くリヤカーの後ろを私は前田さんと一緒に押してたら

(!)

何となく左の方に目を向けた瞬間、岩の陰に吸い込まれるような金色の風を見てしまった。

 今日まで何回も見た、あの金色の風。

 岩は完全に赤い線の向こう側にあった。

 その岩よりもっとあっちだったんだから、金色の風だって赤い線の向こう側にあったのは間違いない。

 私はありったけの平常心をかき集め、何も見なかったようなふりをして、視線を前に向けると

(他に誰も見てませんように・・・)

(早く5分が過ぎますように・・・)

そんなことを考えた。

 あのときあそこで、栞那ちゃんは何をしてたんだろう?

 でも、ここに来る前も、ここに来てからも、今日の夜集会のため集会室に入った瞬間ほど大きなため息が出たことはなかった。

 それに、悪いことばかり考えて、スゴく速く打ってた心臓が、一気にゆっくりになりすぎてピタッと止まっちゃうんじゃないかって思うくらい安心した。

 不意に目に入った、岩の陰に消えてく金色の風。

 いつもの席に座ってる、人形みたく整った横顔。

 どっちもスゴくキレイだったから・・・

 裁きに因る死亡者

  なし


 裁きに因らない死亡者

  なし


 国家の人口

  18人

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