8月12日-(2)-
健ちゃんとヒデくんは、まだ寝てるようだから、手で隠すみたいにして端末に触ったけど
「・・・・・」
投げ捨てたくなるのをグッとガマンする。
@8月12日
~裁きに因る死亡者 鈴木みな恵~
~裁きに因らない死亡者 なし~
~国家の人口 18人~
日付が変われば、こんなメールが来るって分かってたし、届いたのを見れば、暗かった気分がもっと暗くなるだけ。
気分ってドンゾコはなくて、底なしに落ち続けるみたいだし、さらにずっと下だってあるのかな・・・
イヤでイヤでしょうがないのに、端末を操作して鈴木さんが何の法律で裁かれてしまったのか調べる。
何の法律で裁かれたのか知ってないと、自分の行動で何を注意していいか分からなくなるから必ず見ておけ、ってヒデくんに言われてるのもあるし、私自身が見ておかなきゃいけないって思うからでもある。
(端末を離してた・・・)
曽根嶋さんと同じだ。
おとといの夜、曽根嶋さんが端末を持ってないって、何で気づいてあげれなかったんだろう。
(・・・・・)
全然気づかなかったのは、曽根嶋さんが隠してたからだし、曽根嶋さんが隠してたのは
(裁かれないため・・・)
以外に考えれない。
悲しくなる。
(どうして・・・言ってくれなかったの?)
寂しくなる。
(どうして言ってくれなかった?の・・・)
怒りが湧く。
(どうして?言ってくれなかったの・・・)
でも、分からなくない。
曽根嶋さんがだれにも言わなかったのは、私みたいな天然で顔に出やすいタチじゃないから自分の気持ちを上手に隠しながら、みんなに気まで遣うような人だったせいだ。
(気遣いなんて、ここでは役に立たない・・・)
私でさえとっくに分かってる、泣きたくなるくらい確かな、冷たい現実。
「!」
突然、端末がピカーッと光ったので
「なんだあ?」
健ちゃんが飛び起きた。
「・・・法のメールだろ?」
ヒデくんは別に慌ててない。
「うん・・・」
光ってる端末の画面をのぞき込む。
今日は栞那ちゃんが国王だから、ヒデくんの言うとおり、栞那ちゃんの決めた法律が届いたのだろう。
「・・・」
端末を見ると、やはりメールが届いていた。
8月12日 @国王の法
~食堂東側で赤い直線を南北に引いた。私の法は【食堂東側の赤い線を越えて海側に足を踏み入れてはならない】とする。 榮川~
「なんだこれ?」
「この訳分からなさは、榮川っぽいな」
「そうかな・・・」
たぶんヒデくんとは違う意味じゃないかと思うけど、私も栞那ちゃんらしいと感じた。
私達は何をして良くて何をしていけないか、伝えるべき事だったら、こんなにスゴく分かり易い。
でも、伝えたい事は、全く分かりそうもない・・・