8月11日-(10)-
夜集会が終わってから、わたしは矢口さんの助けを借りながら、猪戸さんとも一緒に矢口さん達の部屋まで鈴木さんを連れて行った。
しばらくして、猪戸さんと矢口さんと4人でシャワーに行くことなった。
鈴木さんを一人にするわけにはいかないし、鈴木さんと二人きりっていうのもアレだから、わたしがまず最初にシャワーを浴びて、次は猪戸さん、その次は矢口さんという感じで交代していくことにした。
シャワーを済ませてボックスを出ると、猪戸さんも矢口さんも、もちろん鈴木さんもいなかった。
代わりにシャワー室に来てたのは、愛麗沙と珠美佳の2人。
2人が、さっきまでいた3人と入れ代わった理由は、わたしが訊くまでもなく珠美佳がペラペラと教えてくれたし、シャワー室を出て愛麗沙と珠美佳の後ろを歩きながら、鈴木さんが今頃どうなってしまってるのか、大体は想像できてた。
シャワー室から今朝まで使ってた私達の部屋までの間、心は真っ暗で、脚は鉛のようで、ビックリするくらい廊下が長かった。
部屋の前に着くと、矢口さんと猪戸さんが待っていて、珠美佳が矢口さんにドアを開けさせた。
わたしが部屋に入ると、端末の明かりでうっすらとうつぶせに倒れて両腕のない人影が見える。
「・・・・・」
きっと鈴木さんだろうけど、身体ごと反対向きになったわたしは、今日まで10回夜を過ごした部屋のドアを後ろ手で閉めると、ドアのすぐ外に立ってた矢口さんと猪戸さんに向かって首を振り、2人の間を通り過ぎた。
愛麗沙と珠美佳は、もういなくなってた。
(もっとマシな道を選べなかったの?)
考えるまでもなく、何回でもチャンスがあった。
今日だって、あのまま鈴木さんを連れて、安齊さんが差し出してくれた手を握り返せば、今頃安齊さん達といれただろう。
わたし独りだったら絶対そうしたはずなのに、でも、わたしは独りじゃなかったから。
要するに、わたしの選択が直結して鈴木さんが裁かれることになるのは嫌だっていう、ただそれだけのワガママで、安齊さんの手をはねのけた。
だけど、さっき気付かされた。
あそこで安齊さんの手を握らなければ、わたしが独りで抜け殻みたいな鈴木さんを守れるはずなんてなかったんだ、と。
もちろん、気付いたって、もう遅い。
(・・・・・)
猪戸さんの言葉を信じてたわけじゃない。
矢口さんに何か期待してたわけじゃない。
結局また、わたしの浅はかさのせいで、今日もクラスメイトが1人裁かれてしまった。
わたしは、もう誰を救うことも、できない。
(・・・違う)
わたしは、最初から誰かを救ったり、できるはずがなかったんだ・・・
裁きに因る死亡者
鈴木みな恵
裁きに因らない死亡者
なし
国家の人口
18人