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LEVIATHAN~Sodalis~  作者: 黄帝
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8月11日-(7)-

 シャワーが終わった後、鏡の前に座って本を読んでる舟山さんの隣で立ってタオルで髪をふきながら、一ノ木さんが出てくるのを待ってたら

「え?」

栞那ちゃんが端っこのシャワーボックスから出てきた。

 栞那ちゃんとシャワー室で会ったのは、これが初めてだ。

 金髪が少し強くウエーブしてるので、栞那ちゃんの髪は湿ってるんだろうから、栞那ちゃんもシャワーを浴びてたんだってことは分かった。

 私達がここに来たときは全部のシャワーボックスが空いてたはずだから、栞那ちゃんがここに来たのは、私がシャワーを浴びてる間なのかもしれない。

 「栞那ちゃんもシャワー浴びてたんだ」

「・・・」

返事はないけど、あごがちょっと上下に動いたので、めげずに話を続ける。

「ここで会ったの初めてだね。いつも違う時間に使ってるの?」

「・・・時間は決めていない」

返事がもらえた。

「そっか。そのうちまた会えるかもしれないね」

「・・・」

(!)

そのとき、舟山さんが本から目を離して私達を見てるのに気づいたので、言葉が継げなくなってしまった。

(あ・・・)

一度栞那ちゃんとの話が途切れてしまうと、どうしていいか分からない。

(今日は、これで終わりかな)

なんて思ってたら、栞那ちゃんは口に握り拳を当ててから、すぐに下ろして

「ちょっといいかな」

と言いながら近づいてくる。

「え?なに?私?」

少し声が上ずってしまうのは、話が途切れた後でも行ってしまわないなんて、栞那ちゃんにしては珍しいことと感じてしまったから。

 「・・・」

栞那ちゃんがまた無言であごを動かしたのを見た舟山さんが、私の腕にちょっと触ってから

「・・・あたし、一ノ木さん出てきたら行くね」

やっと聞こえるくらいの小声で言う。

「ああ、うん」

舟山さんは栞那ちゃんを苦手に感じてるみたいて、読んでた本を両手でパタッと閉じると、近づいてくる栞那ちゃんをよけるみたいに鏡の前から離れて、シャワーボックスの方へ行ってしまった。

 「あ、っと、なんだろ?」

ここで何もしゃべらないと気まずくなるんじゃないかと思って口を開いたけど

「・・・」

栞那ちゃんは私の隣で黙って立ち尽くしてる。

「栞那ちゃんは私達がシャワー浴びてる間に来たんだよね?」

「・・・」

「もう終わっちゃったなんて、手際いいねぇ」

「・・・」


 1分くらいして、一ノ木さんがシャワーボックスから出てくると、舟山さんは一ノ木さんと二人でシャワー室を出た。

 「栞那ちゃん、何か話があるの?」

舟山さんと一ノ木さんが出て行くまで私一人がしゃべっていたから、きっと私にだけ話したいことでもあるのかと思って聞いてみると

「美結さんに頼みがある」

隣に立ったままの栞那ちゃんが真っ直ぐ私に向き直った。

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