8月11日-(6)-
明日の国王に決まった榮川が見守る中で野村が端末を操作し、国王選挙の結果を送信する。
全員の端末にメールが届いたところで、夜集会でやるべきことは終わった。
でも、昨日までなら集会が終わってからさっさと出て行くのが普通だったのに、野村の法があるせいで集会室にいるしかない。
(・・・・・)
オレみたいに後ろに座ってると、イヤでも集会室全体が見える。
することもなく座ってなきゃいけないってのは、空いてる席が多くなった現実から目を背けるわけにいかないってことでもある。
感傷的になっても無意味だから、いなくなった奴らのことは、いちいち気にしないし、そんなことを思い出したりしてる暇なんてないくらい考えなきゃならないことが多い。
今日で少しだけ解決したこともある。
鹿生は何のために数人で国王を独占できなくしたのか、オレは結構気にしてた。
国王の立候補がかち合ったのは、今日が初めてだ。
こんなとき、鹿生の法は確かに役に立つ。
榮川なんて誰からも浮いてる奴だってのに、森みたいに2回国王をやった奴が相手なら選挙に勝てるのが証明された。
そういう意味でいえば、確かにこの先何回も森が国王というのは正直ウザかったし、鹿生も役に立つことがあるってことでいいのか?
だって、鹿生が決めた法を見た時にも思ったことのうちいくつかは、まだずっと引っ掛かったままだから。
たとえば、鹿生は何考えてあんな法を決めてまで国王になれる奴を増やそうとしてるのか、分からない。
ま、もちろん誰か、仁藤あたりか?鹿生に入れ知恵してれば何か裏があるんだろうと思うしかない。
国王になる回数なんて、一人ひとりが行動に気を付けなくちゃいけない中身の法なんかじゃなくて、違反者が出るわけもないし、違反者の出ない法が多ければ、それだけ、やらなくちゃいけないこととやっちゃいけないことは減る。
森の法は2つとも下らない内容だったし、今日の野村の法は下らなさに便乗した典型例だろうから、ああいう校則みたいな法を並べることもできるけど、違反者の出ない法を並べた法がもっと時間稼ぎになる。
だから、あの日からは、鹿生や仁藤が次に何の法を出して補完してくるかで時間稼ぎかどうか知ろうとしてたのに、もう鹿生も仁藤も国王を目指してるわけじゃないのか立候補したりもしない。
こうなると、鹿生の法単発じゃ意味が薄いことには気付いてるかどうかも疑わしくなってきてる。
(やっぱり、大したことは何も考えてないのか?)
と思い込むのも早い気はするが、鹿生の法に裏があったって、ほっといていいのかもしれないから、取りあえず今はまだ様子を見ていよう。