8月11日-(4)-
夜の集会が始まったけど、空いてる席は11。
考えると胸がズキッと痛くなる。
でも、11なら、来れるはずの人は集会室に全員来てるということで、それはきっといいことだ。
今日の国王は野村くん。
野村くんの作った法律は、午後7時から午後7時30分までは集会室で過ごす、となってて、これは昨日の森さんが朝集会の終わりを決めたのと同じで、夜集会の終わりを決める法律のようだ。
(まあ、でも・・・)
どっちも私には何の意味があるのか分からない。
「では、明日の国王を決めたいと思います」
野村くんが呼び掛けると
「あたしがやってもいいよ」
すぐに森さんが手を挙げた。
(森さん、またやるんだ)
森さんは昨日も国王なんだから、明日も国王になったらこれで3回目ということになるはずだ。
「森さんということでいいですか?」
野村くんが一応みんなの同意を求めるため聞くと
「立候補する」
背中の方から声が聞こえた。
「え?」
私もみんなと同じく声の方を振り向く。
「立候補する」
いつもどおり集会室の右奥に座ってた栞那ちゃんが立ち上がっていた。
「は?」
栞那ちゃんの言葉が意外だったのは森さんもだったようだ。
(え?栞那ちゃんが?)
と思ったし、今まで1日1人しか立候補してなかったのは私でさえ知ってる。
(もしかして、ホントに栞那ちゃんと森さんのどっちにするかって選挙するの?)
もちろん、他のみんなも私と一緒のことくらい考えたんだろう、全員が栞那ちゃんに注目する。
「他にはいるか?」
野村くんが他の立候補者がいないか集会室の中を見回したけど、もう誰も立ち上がらない。
「森さんと私と、二人だけらしい」
栞那ちゃんが言うと
「ああ」
野村くんは一応答えながら、それでもまだ、視線は一応他の立候補者を探してるような感じだけど
「私に決まった」
栞那ちゃんが右奥から前に向かって歩き始める。
(え?)
「あんたに決まったって、なんで?」
すかさず言ったとこからすれば、私の疑問は森さんの疑問と同じみたいだ。
「いや、榮川の言うとおりだ」
声のした方からすると、長谷田くんが言ったらしい。
「どーゆーこと?」
今度も詰め寄りそうなくらいの勢いで長谷田くんをにらんで聞き返した森さん。
でも、長谷田くんは落ち着いてて
「確か5日だったな、健蔵が決めたのがあっただろう?」
と答える。
(急に健ちゃんの名前が出てきたけど、どんな法律だったっけ・・・)
今日が11日だから、5日っていうのは、たった6日前のことなのに、その6日でいろんなことがあり過ぎた。
失われた人があまりにも多い。
だから、ここにいると、1日は100日、1000日みたいだ・・・