8月Y日
ずっと地獄同然の日々を生きている
死んだ後さえ地獄行きなのだろうか
(・・・・・)
今日もカーペットさえ敷いていないただの床で、横になる。
夏だから平気とはいえ、何一つ掛けるものがない。
そんな生活にさえ、いつか慣れるときが来るのだろうか。
仰向けになって、思い切り大きく息を吐く。
見えるのはコンクリートの天井だけ。
(今日は生きたまま終わった)
ここのところ、毎日思うようにしてる。
次の日が来なくなった何人もの顔を思い浮かべる。
忘れないようにしないといけないから。
こんな生活が自分達の日常ではなかったこと。
こんな生活が続くはずではなかったこと。
こんな生活がいつか必ず終わると決まっていること・・・
修学旅行は夏休み中に組まれていた。
行きは飛行機で行くことになっていたが、空港までの交通手段はクラスによっていろいろで、現地集合もあれば、一旦集合してからシャトルバスというクラスもあり、うちのクラスは一旦集合してから電車で行くことになっていた。
8月1日の7時半に駅集合して7時45分の空港行き電車に乗れば空港までは21分で着く、はずだった。
全て予定どおりに進んでいた。
窓の外を流れてく景色を眺める人、これからの予定について話す人。
楽しそうな話があちらこちらから聞こえてきていた。
入学したときから、ずっとこの旅行に行く日のことを意識してきたのだろう。
2年生の4月なってからは特に、自分なりの計画を立てたり、一緒に行動する人達と話し合ったり、何度もしていた。
だから、誰も思っていなかった。
修学旅行に行けない?
(今でも夢の中?)
電車の中を何となく眺めていたのまでは、覚えている。
だから、8月1日の午前までは、夢の外。
しかし、急に夢の中に引きずり込まれる。
そして、8月1日午後、物凄いベルの音で、また夢の外へ。
夢の中にいた間の記憶は真っ白で、あとから考えてみると、多分半日ほどの間が完全に抜けている。
あの電車の中で何が?
何故こんな所に来た?
(ダメだ・・・)
左、右と頭を振る。
そんなことを考えても意味がない。
何日かの間、何回となく考えたとおり、あのベルの音でクラス全員が夢から追い出された以上、まだ夢が続いてるなんてはずがなく、今の毎日が現実。
コンクリートの天井をボーッと見つめながら、ゆっくり右左に頭を振る。
いつまで考えても意味のないこと。
みんな、夢の前まで確かな現実を生きていた。
みんな、夢の中でも確かな現実を生きてきた。
みんな、夢の後にも確かな現実を生きていく。
眠くもなく、眠れそうもないのに、目を閉じる。
(明日また、生きたまま終える・・・)