8月10日-(10)-
これだけは間違いないなって思うのは、あたしも理璃も、絶対一人になっちゃいけなかったってこと。
あたしに何ができたってわけじゃないんだろうけど、理璃と一緒にいれるように、がむしゃらに何かしなきゃいけなかった。
あたしがどう答えるのかだって、全てを左右する大事なことだったから、一人で答えを出しちゃ、自分勝手に選ぶ方を決めちゃ、いけなかったのかもしれない。
あたしは思い上がってたんだ。
矢口さんが話を持ってきたあの日、あたしの隣には、まだ理璃がいてくれたのに。
あたしさえ声掛けられるくらいなんだから、理璃なんかは、とっくに同じ話をされてたはず。
だって理璃は、あんなにキレイだったんだから、話を持ってこられないわけがない。
(だったら・・・)
理璃は、どうするの?って、聞いとけば良かった。
理璃は、どうするの?って、聞いてみたかったな。
理璃は、どうするの?って、聞いたら違ったかも。
そっかぁ・・・
あたし一人で出した答えなんて、正解なんかじゃなかった。
あまりにも大事なことだったから、理璃の重荷になりたくなくて、一人で勝手に決めちゃった。
選んでダメな方だったのに、やっぱりそっちをあたしは選んでしまったわけだ。
立ち上がって、握りしめてた端末を見つめる。
たぶん、ううん絶対あたしは、これをなくしたんじゃない。
だからこそ、一ノ木さんは、ホント優しくて人がいい。
今はもう、他人の物を持ってることなんかが知られたら、それだけで告発されてしまってもおかしくない。
(それなのに、これをあたしに渡しに来てくれた)
ただ、あたしは端末をなくしたわけじゃないから、あたしに渡すようにあのうちの誰かから言われてたんだろうし、一ノ木さんが断れたはずもない。
不意に、床を転がっていくあたしの右手。
右手からこぼれ落ちた端末は、床を滑っていく。
右手と端末の行き先を確かめるよりも早く、急に頭の中が、チカチカ、チカチカ、し始めた。
いつか来ることが決まってた瞬間。
すぐに来ることが分かってた瞬間。
なんかスゴい悲しくて涙が止まらなくなる、って思ってた
なんかスゴい声とか出ちゃうんじゃないか、って思ってた。
(あ・・・)
つながった・・・
何だか分かった・・・
(そっかぁ・・・)
お腹に何かぶつかったみたいなショックがあって、後ろに倒れた。
薄暗い中で見えるのは天井だけ。
白っぽいコンクリートの天井。
希望に関わる何か、じゃなかった・・・
絶望に関わる何か、じゃなかった・・・
役に立たない何か、じゃなかった・・・
あたしには?
あたしだけ?
明日がこ・・・!
裁きに因る死亡者
曽根嶋茉莉亜
裁きに因らない死亡者
なし
国家の人口
19人