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第99話 通信魔道具の開発

 ◆三人称視点◆


 ジェラリーが【以心伝心】スキルの詳細を聞いて思いついたのは、遠く離れた相手に何らかを伝えるという、いわゆる通信の仕組みである。

 【以心伝心】を知るまでジェラリーは魔力が空間を隔てて届くことを知らなかった。

 そして大きさこそ実用的ではないが呼びかけ魔道具は既に使えており、実現できることがわかったのも大きかったのだ。


 今のままではマーガレットのようなレアスキルを使える人が中継する必要があり、一般に使えるものではない。

 そこで【以心伝心】を使える人に代わり、通信を管理する魔道具を作ろうと考えた。

 呼びかけ魔道具はマーガレットが感知できるように、使う人の魔力を取り込み【以心伝心】の制御に変えて発信するという仕組みになっている。

 受信側のほうも同様に【以心伝心】の制御を組みこむことができそうだった。

 ただし、これだけでは相手が呼びかけたことを受信するだけである。


 【以心伝心】では思ったことが言葉のように伝わるが、これを実現するのは難しそうだ。

 では思念ではなく音として発した声を伝えるのであれば可能ではないかと。

 ここで問題になるのが、音を魔力に変換することだ。


 ジェラリーはダンジョン核を利用した魔道具のため、魔物素材を組み合わせ部品化した。

 部品化したものをさらに組み合わせて魔力回路を作り、出力調整や切り替えの制御に利用している。

 これまでの魔道具は単純な制御しか必要なかったが、音声の魔力変換と送受信にはもっと複雑な制御が必要になる。

 魔力回路も複雑なものになるのだが、設計するには部品同士が無理なく動作するように様々な計算をしなければならない。

 そこで【演算】スキルが必要になるのだ。



 「ふーん、よくこんなこと思いついたわね」


 「これが実現できれば魔物素材判別による革命に続いて、情報伝達の革命になりますわ。高速移動できる動物や希少な転移魔法に頼っていた遠隔地への連絡が、魔道具だけでできるようになりますのよ!」


 「そうねえ。これさ、上手くいったらもの凄く大きな事業になるんじゃないの?」


 「先ず魔道具を作ってからでないとお話しになりませんわ。それに事業にするにはダンジョン核が確保できなければ……」


 「うん、それは何とかなるかも」


 「ヴェロニア……本当に大丈夫なんでしょうね?」


 「まあまあ、先のことはなるようにしかならないって。今は設計を頑張りましょ」


 「そうですわね。ああっ、またそんな設計にしようとして!」


 「え~、中継魔道具は思いっきり高性能にしておかないと後で困るわよ」


 「限度と言うものがありますの!高価な素材をいきなり使おうとしないで!」



 ヴェロニアとジェラリーは中継魔道具を試作しようとしていた。

 意見が正反対に分かれているように見えるが、何故か最終的にはお互いの意見がある程度反映されたものができあがる。

 マーガレットも同席しており魔道具が正常に動作しているかを確認するため、魔道具に対し【以心伝心】で呼びかけたり反応をみる役割だ。


 その隣ではスーザンがジェラリーから説明を聞きながら、魔力回路を設計するための計算を行っていた。

 最初は戸惑っていたが、ジェラリーが作成した魔物素材を数値化したものを参考にすると理解できるようになり、徐々に設計にのめり込んでいった。

 スーザンは何か後世に残る仕事がしたいと希望していたが、今回の仕事はまさに希望通りと言えるだろう。

 今までにない新しいものを自らの計算によって生み出せることが、楽しくてしょうがないようだ。



 そしてさらにその隣でアリステラとアメリアは魔物素材の加工を行っていた。

 アメリアは土の素材であれば自在に成形できるようになっていたが、魔物素材の成型に苦戦しているようだ。


 「アメリアちゃん、土以外の素材も基本は一緒ですわ。えーと、硬かったり柔らかかったりが違うとするよね。硬いのはふわってする感じで、柔らかいのはきゅってする感じですわ」


 「ふわっ?きゅっ?うーん、わからないかも」


 「あれ~、じゃ、じゃあほわほわ~って感じ」


 「え?え?」


 アリステラは素材に触れただけで特徴や硬度などが瞬時にわかる。

 【能工巧匠】を使いこなしていることもあるが、さらに【分析】スキルが熟練したことで感覚的に素材のことがわかるようになっていた。

 その感覚を教えようとして先ほどの説明になったのだろうが……

 天才肌すぎてアメリアに理解してもらうのは無理がありそうだ。


 「う~ん、私やっぱり人に教えるの苦手です……」


 「あ、あのっ。アリステラさん」


 「はい?何かな」


 「素材を加工しているところを見せてくれたらわかるかもです。私のお人形もアリステラさんが作ってるところを参考にしたです」


 「そうなんだ!へえ、見るだけでわかるなんて凄いね」


 「い、いえ。えへへ」


 「それじゃやってみるね。えいっ」


 アリステラが気合いと共に加工を始めたのはワンダーカメレオンの皮だ。

 皮があっという間になめされた革に変化し、すぐに薄く引き伸ばされて紙状になる。


 「わあ……すみません、速すぎてわかりませんでした」


 「そっか、なら次は大きめのをやってみるね。えいっ」


 ワンダーカメレオン丸ごと分の皮がみるみるなめされていき、薄く引き伸ばされた大きな紙状に加工されていく。

 確かに先ほどよりは見る時間があったようだが……


 「おー、あれがこんな風になってこうなるんですね」


 「アメリアちゃん、どうかな?」


 「やってみるです」


 アメリアが皮の加工を始めた。

 しかし、どうもなめし方が不完全なようだ。


 「そこはね、皮から水分を飛ばすようにぎゅーってやるの。こんな感じね」


 アリステラが皮に触れると水分がすうっと抜けていき、なめしがあっという間に終わった。


 「ほわー、すごいです。ここからやってみるです」


 アメリアも紙状に加工するのは問題なくできたようだ。


 「わあ、この加工は問題ないね。どんどんやっていっちゃおう」



 マーガレットはアリステラとアメリアの様子を試験の合間にちらちら見ていた。

 ほのぼのとした会話だな~と微笑ましくしていたのだが……

 徐々にアメリアが慣れて加工が上手くできるようになってくると、雰囲気が変わってくる。

 アリステラはアメリアの参考になるよう、いつもより張り切って加工しているようだ。

 アメリアも負けじと加工を頑張る。

 すると凄まじい勢いで魔物素材が消えていき、完成した部品が積みあがっていった。


 そんな作業をしている中、魔道具クランの開発者たちが見学にきた。

 しばらく驚きと感心した様子で部品が積まれていくところを眺めていたが、ちゃっかり魔物素材を運んできてついでに加工してもらっていた。


 「ヴぇ、ヴェロニアさん。あの2人放っておいてもよろしいんですの?部品の積み上がり方が尋常ではございませんし、何か予定外のものまで加工しているようですが」


 「ん?いーのいーの。前来たときアリステラ1人だけで3か月分ぐらいの作業を終わらせちゃったらしいから、ここの人たちも慣れたんじゃないかな」


 「人間ってどんなことでも知ってしまえば慣れるものなのですね……」


 追加された魔物素材の加工も一段落ついたところで、アリステラとメアリはヴェロニアのところへやってきた。


 「ヴェロニアさん!加工は終わったので、こちらも手伝いますわ」


 「ありがとう~。うまくいかなかったところの部品を調整したかったの」


 「えっと、それと魔道具の改良のことなんですけど」


 「そういえば言ってたわね。何か改良できるかもしれないって」


 「はい!呼びかけ魔道具のデザインを相談したかったのです」


 「デザイン?ああ、それでジェラリーのところに来たかったのね」


 「加工をするのは得意ですけど、デザインを考えるのが苦手で……。前にチェスリーさんの指示でクマさんの滑り台を作ったことがあって、今も子供たちに大人気ですわ。呼びかけ魔道具も用途に合ったデザインにすればもっと使いやすくなりますわ」


 「まあっ、アリステラさん!素晴らしいお考えですわ。やっぱりうちの子にしたいぐらいですわ」


 「ちょっとお、あげないからね。とはいえ、あたしはデザインにこだわりがないから、ジェラリーの力を貸りるしかないわね」


 「もちろんですの。私と一緒に素敵なデザインを作り上げましょう!」


 「はーい!」


 アリステラとアメリアが参加したことで、作業効率がよくなった。

 ヴェロニアとジェラリーが設計案を作り、スーザンが魔力回路に必要な計算を行う。

 回路案ができたところで、アリステラとアメリアが魔物素材を調整して仮回路を作る。

 そしてマーガレットが【以心伝心】で、仮回路の試験を行う。


 この繰り返しで徐々に問題点は改善されていったが、すぐに解決できない事態が発生したようだ。



 「ヴェロニア、ちょっと困ったことになりましたわ」


 「ジェラリー何かあった?」


 「魔物素材と魔石が足りなくなりましたわ。魔石は明日には追加できますが、魔物素材は少しかかるかもしれません」


 「そうか~。私たちはもう戻らないといけないし、今回はここまでね」


 「スーザンさんとアメリアさんはこのまま残っていただけますのね?」


 「そうね。2人とも乗り気みたいだし。その代わり例の件、よろしく頼むわよ」


 「ええ、わかりましたわ」



 魔道具の開発を始めてから3日、驚異的なペースで試行錯誤を行っていたせいで、予備の素材まで使い切ってしまったようだ。

 その代わり、アリステラとアメリアが魔道具クランの仕事を手伝い、注文分の完成が大幅に前倒しされたことで時間の余裕ができていた。


 ヴェロニアがジェラリーにお願いしたのは、アメリアのレアスキル【慧眼無双】のことである。

 スキル効果を自覚するには、物事の真意や善悪を見抜くために視る力を鍛えるのがいいだろうと判断したのだ。

 アメリアには人との会話をよく聞き観察するように指示している。

 先ずは性格をよく知っており、わかりやすいジェラリーに実験台になってもらったのだ。

 ジェラリーの酷い紹介をしたのもそのためである……たぶん。


 ジェラリーにそのことを伝えると当然怒ったが、魔道具の件でうやむやになった。

 さらに魔道具クランでは様々な商人や貴族と面会する機会があるので、そこにアメリアも同席させてもらうようにお願いした。

 アメリアは何となくレアスキルの効果を自覚し始めたようだがまだ不十分だ。

 海千山千の相手と会う機会を多くすることで、熟練を早めるつもりなのだろう。


 通信魔道具が未完成なこともあり心残りはあるが、ヴェロニア達はスーザンとアメリアを残して魔道具クランを後にした。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


区切りの100話で6章完結となります。


次回は「現実に立ち向かえ」でお会いしましょう。


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