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第98話 魔道具クランを訪ねて

 ◆三人称視点◆


 時は少し戻り第15回クラン会議後からになる。

 呼びかけ魔道具の改良を依頼するため、マクナルに向かったメンバーの様子を見てみよう。

 メンバーはヴェロニア、マーガレット、アリステラ、スーザン、アメリアの5人だ。


 シルビアの転移でマクナルに到着した5人は魔道具クランへ移動していた。

 初の転移体験とマクナルにスーザンとアメリアは興奮気味のようだ。


 「ここがマクナルなんですね!転移って凄いです」


 「わあ、この建物が元クラン拠点なんですね。あの大きなお屋敷もいいですけど、こちらのお屋敷もいいです」


 「2人は初めてだったわね。ここにもまた来ると思うし、用事が終わったら案内してあげるわ」


 「それは嬉しいですけど、いいのですか?」


 「ええ、もしジェラリーとの話がすぐに進まなかったらね。いくらジェラリーでもすぐに改良の案がでるかわかんないし。スーザンの【計算】スキルのことはついでに聞いてみるぐらいのつもり」


 「そ、そうでしたか。ジェラリーさんにお会いするのも初めてなので緊張していました」


 「緊張なんてすることないわよ~。妥協が嫌いな頑固者ってところ以外はいい人だから」


 「え?それだけ聞くと怖い人に思えますが……」


 「あれ、おかしいわね。えっと、すぐ怒鳴ると……いや、これは言わなくていいわね。できるまで何度もやり直しさせられたりとか……理屈っぽいとか」


 「……段々不安になってきました」


 ヴェロニアの酷い紹介にスーザンは委縮してしまったようだ。

 ジェラリーにそういう一面があることも確かだが、もう少しましな紹介はできなかったのだろうか。


 「まあ、会えばわかるわよ。行きましょう!」


 「は、はあ」


 魔道具クランに到着しヴェロニアがジェラリーとの面会を希望すると、すぐに応接室へ案内された。

 相変わらず顔パスである。

 ジェラリーもすぐに応接室へ駆けつけてきた。


 「ヴェロニアさん!ダンジョン核を持ってきてくれましたの!?」


 「あのねえ、配達人扱いは酷いんじゃないの。それにいつもダンジョン核持ってくるとは限らないわよ」


 「あ、こほんっ。失礼しましたわ。先日のダンジョン核はとても助かりました。おかげで魔道具の注文は順調に対応できていますの」


 「よかったわね。それならもうダンジョン核持ってこなくてもいいんじゃないの?」


 「とんでもない!当面は乗り切れるというだけで、あればあるだけ欲しいですわ!!」


 「もう~そんな欲張らなくてもいいじゃないの」


 「欲ではありませんわ。注文された貴族や商会の分をなかなか後回しにはできなくて……。冷暖房の魔道具は病院や集会場などの公共施設への要望も多いの。現状のままでは本当に必要なところにお届けできませんわ」


 「なるほどねぇ、わかったわ。また頑張って調達してくるように言っておくわ」


 「私の発言でチェスリーさんをこき使ってる様な言い方はやめてくださいませ」


 「なによ~。ダンジョン核欲しくないの?」


 「それは……いりますけど。本当に無理をさせたりしていませんよね?」


 「うん、それは大丈夫よ。それじゃこっちの要求も聞いてもらうわね」


 「う……はい、何でしょう」


 「呼びかけ魔道具というのを作ったんだけど、大きすぎて不便なのよ。小型化してくれないかな」


 「はあ、また何か大雑把な設計をしたのね。いいわ、引き受けましょう」


 「ありがとね。ついでにさ、今マーガレットを呼び出すだけしかできないんだけど、道具間でのやり取りとかできるともっと便利だと思わない」


 「あ、あなた……それってレアスキルの効果じゃありませんこと!?小型化だけならまだしも、そんな難しいことまで手をつけられませんわ!」


 「まあまあ、便利と思うか聞いてみただけよ。私が実現したほうがよさそうね」


 「え?……もう何かお考えがありますの?」


 「うん、呼びかけ魔道具を作ってるときにちょっと思いついてね。ジェラリーには難しいかもねえ」


 「くっ、私の発想が貧困だとでもおっしゃるつもりですか」


 「いやいや、そんなことちょっとしか思ってないから」


 「はああ!?わかりましたわ。私が設計を考えてもよろしくてよ」


 「いやいや、無理しなくていいわよ」


 「やりますっ!」


 「ん、じゃあお願い。あとね、スーザンって【演算】スキルを持ってるの。チェスりーは応用できる可能性があるって言ってたけど、何か思いつくことない?」


 「【演算】ですか……すぐには思いつきませんわね」


 「チェスリーが言うには地図作りに役立つらしいんだけどね」


 「地図?……【演算】……測量、図形……単純に計算に使うのならわかりますが、応用とおっしゃっていたのですよね?」


 「そう言ってたわね。私は図形あたりで工夫の余地があると予想してるけど」


 「うーん、難しいですわ。【演算】を使うのではなく風景を残すだけであれば、最近便利な方法が見つかりましたけど」


 「え、何それ。教えてよ」


 「ヴェロニアが変化の腕輪に使っていたワンダーカメレオンの素材ですわ。魔力を流すと幻覚を見せることができますけど、革自体もそれを補助するように色が変わりますよね」


 「へええ。革自体も色が変わるの?幻覚が発動してる間だと、色が変わってるなんてわからないのよね」


 「あなたの魔道具は幻覚作用が強すぎるのですわ。段階を踏んで確かめればわかることですのよ」


 「え~、段階踏んでたら仕上がりが遅くなっちゃうじゃん」


 「全くあなたって人は……もういいですわ。革を紙状にして一定時間残したい風景の光をあてるとそのまま革に風景が定着しますの」


 「お~、それいいわね」


 「ただ素材の加工が難しいのですわ。アリステラさんに手伝って頂ければ助かりますの」


 「そっか、うん。それじゃアリステラにお願いしましょ」


 「呼びかけ魔道具のことですが、マーガレットさんに繋がると言われましたね。スキルのことは内密にしますので、詳しくお伺いしてもよろしいかしら?」


 「いいわよ。マーガレットお願いね」


 「ええ、わかりましたわ」


 マーガレットはジェラリーさんに連れられて退室した。

 別の部屋で試したいことがあるそうだ。


 残されたメンバーはゆっくりとお茶を飲みつつ待つことになった。

 スーザンの緊張はヴェロニアとジェラリーの会話を聞いてすっかりとけていた。

 ヴェロニアの紹介は全くの嘘ではないが抜粋しすぎなことがわかったからだ。



 「スーザンの【演算】スキルのこと、ジェラリーはすぐ思いつかなそうね。まあチェスリーのほうに期待しましょ」


 「……は、はい!」


 「ん?まだジェラリーのことで緊張してるの?いい人だったでしょ」


 「そ、そうですね」


 「あとね、もしかするとアメリアに魔道具作成のお手伝いをお願いするかも」


 「……あ、はい!私でよければお手伝いさせていただくです」


 「どう?ジェラリーのこと見て何かわかったことはあった?」


 「は、はい……何となくわかったかもです」


 スーザンは緊張がとけた気のゆるみで返事が遅れたようだ。

 アメリアは何やら別のことを指示されていたようだが……



 「ヴェロニアさん、私がお手伝いしてもいいですよ?」


 「アリステラはダンジョン捜索が終わったらチェスリーと攻略に行かないといけないでしょ」


 「あ、そうでした。でも捜索予定が3日間だから、その間なら問題ないですよね?」


 「そうね。あっ、それならアメリアの教育もお願いできるかな」


 「ほえ!?私がですか?教育はチェスリーさんのほうがいいと思いますけど……」


 「アリステラも先輩になったことだし、得意分野は教えられるようにならないとね。いつまでもチェスリー任せじゃいけないわ」


 「あ、はい」


 「【能工巧匠】もまだ可能性があると思うのよ。これも自分で考えることが大切なの。人に教えることで得るものがあるかもしれないし、成長していかないと追い抜かれちゃうわよ」


 「う、わ、わかりました」


 思わぬところで甘さを指摘されたアリステラ。

 少しへこんだものの、ヴェロニアの言う通りだと決意を新たにする。

 そして妥協が嫌いなのはヴェロニアさんも同じですよね、と心の中でつぶやくのだった。


 「スーザンとアメリアも、チェスリーからしっかり学びなさいね。レアスキルを諦めていたことはあるけど、常に成長を考えて行動している人よ。2人とも素質は十分なんだからね」


 「「は、はい!」」


 ヴェロニアによる指導が行われているうちに、ジェラリーとマーガレットが戻ってきたようだ。

 ジェラリーは何かいいことがあったのか、笑顔でヴェロニアに詰め寄ってきた。


 「ヴェロニア!マーガレットさんは素晴らしいですわ!」


 「ちょ、ちょ。そんな近づかなくても聞こえるわよ」


 「レアスキルの効果も、何より応用として考えていることも素晴らしいですわ!!」


 「だーかーらー、大きな声でなくても大丈夫だってば」


 「……ふう。魔道具師としての魂が揺さぶられましたわ。スーザンさんの【演算】スキルも必要になりますので、応用の回答といえますわね」


 「お~~、さすがジェラリーね」


 「マーガレットさんに【以心伝心】を詳しく教えていただいたおかげです。そこで相談ですが、スーザンさんとアリステラさんを開発のお手伝いにお借りできないかしら?」


 「ん~、スーザンはいいけどアリステラは3日間だけね。アリステラは素材の加工のために必要なのかしら?」


 「そうですわ」


 「ならアメリアが担当するわ。アリステラがアメリアにやり方を教えてあげてね」


 「うわあ、さっそく教育をやってみるんですか」


 「まずはやってみることよ。……無理ならチェスリーの負担が増えちゃうかなぁ」


 「むう、ちゃんとやってみせます!」


 「はい、よろしくね。スーザンとアメリアは研修みたいなものよ。期待しているわ」


 「が、頑張ります」

 「私も頑張るです」


 こうして魔道具クランで魔道具開発をすることになった。

 そして何となくヴェロニアの手の平で踊らされているように感じるメンバーたちだった。

 

今回もお読みいただき、ありがとうございます。


次回は「通信魔道具の開発」でお会いしましょう。


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