第97話 ダンジョン核の大量回収
ダンジョン捜索と魔道具改良で別行動していたメンバーと合流したが、スーザンとアメリアはマクナルに残してきたという。
ヴェロニアが言うにはジェラリーさんに何か考えがあるようだ。
訪問した目的は違うはずなんだけどな。
「ヴェロニア、呼びかけ魔道具のほうはどうなったんだ?」
「そのことも含めてお願いしてきたわ。小型化だけならすぐできそうだけど、もっと改良できそうなんだって」
「へえ。さすがジェラリーさんだな」
「そうね。彼女の魔道具にかける情熱は感心するわ」
「しかし、あの2人だけ残してきて大丈夫かなあ」
「うーん、ちょっと心配なところもあるけど、こっちもやらなきゃならないことがあるしね」
「そっか、それで2人だけ残してアリステラとマーガレットは連れて戻ってきてくれたのか」
「うん。何かあれば、でっかい呼びかけ魔道具は置いてきたから連絡してくるわ。そっちのダンジョン捜索は終わったのよね?」
「ああ、攻略対象は確定した」
「それじゃ準備して、早速明日から攻略を始めましょ。まだ帝国の方は情報収集中らしいけど、ちょっと嫌な感じになってきてるそうよ」
「嫌な感じ……ジェロビンの報告だし危ないのかもしれないな」
「状況次第では帝国に飛んでもらうことになるから。ジェラリーに追加のダンジョン核も約束しちゃったし、ちゃっちゃと攻略しちゃってね」
「ああ、今度は戦闘面も強化されたパーティーだ。でも焦らせるのはなしにしてくれよ。慎重にやるからな」
「わかってるわよ。攻略のことは任せるわ」
翌日。
ダンジョン攻略に出発だ。
パーティーは俺、メアリ、ミリアン、アリステラ、マーガレット、レフレオン、マックリンの7人だ。
追加メンバーのレフレオンとマックリンは初参加になる。
俺とメアリも戦闘に参加するが、転移やダンジョン核の位置特定にも魔力を使うので、なるべく2人に任せたい。
2人とも異論はないとのことだ。
攻略対象のダンジョンは、王都の西側外周にあるダンジョン核が大きめのものが多い。
レフレオンは大きいのから先に片づけたいという。
俺は慎重に進めたいので小さい方からいくつもりだったが、戦闘担当がそう言うなら従おう。
最初の攻略対象があるダンジョン核の場所にやってきた。
攻略方法は以前と同じだ。
アリステラの分析と穴あけ、マーガレットの索敵、俺とメアリの転移、ミリアンの遠隔収納を使う。
前回と違うのは、マーガレットの索敵に敵がいた場合の行動だ。
レフレオンとマックリンに魔物を殲滅してもらうことになる。
大きめのダンジョン核だけあって、小規模ではあるが層が深くまで成長しているだろう。
それでも2つ目の空間に穴を空けるまで敵はいなかった。
3つ目の穴あけで、ついに敵がいる空間にあたったようだ。
「マーガレット、敵の数はいくつだ?」
「反応は7つですわ。私を正面として右に5つ左に2つありますわね」
「よっしゃ。チェスリー、転移後すぐに索敵だけ頼むぜ。視界に入るやつは俺とマックリンに任せろ」
「わかった」
俺、メアリ、レフレオン、マックリンの4人で穴に落とした転移陣に向けて転移で移動する。
「マックリン!」
「おう!」
敵はトカゲに足が増えた様な容姿をしたバジリスクだ。
イビルアイほどの脅威ではないが、魔眼持ちで石化や麻痺攻撃をしかけてくる。
転移からの不意打ちなので、敵が気づく前に戦闘をしかけることができる。
俺は索敵を展開し、周辺に新たな敵の反応がないかを確認する。
マックリンは右に、レフレオンは左に駆けていく。
レフレオンもマックリンも武器を持っていない。
2人とも拳にグローブのようなものをつけているだけだ。
それにしてもレフレオンの足あんなに速かったっけ。
一瞬の移動が目にも止まらないほど速く、あっという間にバジリスクの目前に現れる。
そしてすかさず拳を頭に叩き込んだ。
――ドッゴッン
鈍く沈み込むような音が響き、バジリスクが絶命する。
続いて次のバジリスクの前に即座に移動し、拳を頭に叩き込んだ。
再び鈍い音が鳴り響き、バジリスクが倒れる。
――ドッゴッン
ん?この音は左方向からだ。
左を振り向くと、既にマックリンが最後のバジリスクに止めをさしていた。
これは凄いな……戦闘開始から数秒しかかかってないぞ。
【察知】に新たな敵反応はない……戦闘終了だ。
「レフレオンさすがだな。しかし何故武器を使わずに拳なんだ?」
「武器より拳のほうが強えからよ。衝撃を逃がさねえ打ち方で敵の脳を直接破壊すりゃあそれで終わりだぜ」
「そ、そうなのか」
「他にも理由はあるぜ。鎧もつけてねえだろ?敵との距離を一瞬でも速く詰めるのに重い装備なんて邪魔なだけだ。拳がありゃあ余計なもんはいらねえってことよ」
【建城鉄壁】に挑んだときもそうだったが、拳の破壊力に凄い自信を持っているな。
斧使いのはずだったのに、すっかり格闘家になってしまったようだ。
「マックリンも同じ戦いかたをしていたようだな」
「ああ、俺の見込んだとおりすげえ才能もってやがった。ちょいと悔しいが俺より速いし拳の威力も強え。格闘をやるために生まれてきたような男だぜ」
「そこまで凄いのか……」
「よう、チェスリー。今の見てたか?」
「あ、いや。レフレオンのほうを見てたら終わってた」
「おい!!せっかく見せてやったのに」
「速すぎなんだよ。それに索敵してたのに、じっくり見る暇なんてないじゃないか」
「相手が雑魚すぎたか……。まあいい、今のはほんの序の口だ。まだ俺は実力の10分の1も出してないぜ」
「おっと、言うねえ。確かに移動すら目で追いきれなかったがな」
「この移動方法が手に入れた力の1つだ。縮地という武術の技があるが、魔力補助で格段は速いと思うぞ」
「おお、かっこいいな。今は魔力視を使っている場合じゃないから、また後でじっくり見せてくれ」
「ああ、かまわないがこいつはサイクロプスを倒した技より難しい。盗めるならどうぞやってみてくれ」
「よーし、すぐ盗んでやるからな」
強気に返してみたが、これも体術と魔力の連携なんだろうな。
ギガントサイクロプスに使った技は足から腕にかけて魔力を線のように繋ぎ、足の踏み込みの反動から体の捻りまでを連動させ、相手に魔力を押し込む技だ。
全てが連動しないと、単なる気の抜けた拳になってしまう。
何度も反復練習してようやく身につけたんだよな……。
そうしないととても実践で使えなかったからだ。
そんなことを考えていたら、既にメアリがアリステラとマーガレット、ミリアンの3人を連れてきていた。
「師匠、お話しされていたようなので全員連れてきました。褒めてくれてもいいです」
「お、おう。メアリ気を利かせてくれてありがとうな」
「えへへ」
「お前ら平和だな。一応ダンジョンの中だぞ」
「ん?マックリンはまだ本気だしてないんだろ?お前がいて危険なことになるのか?」
「お、そうだな。任せとけ」
マックリンも結構ちょろいな。
俺はダンジョン内では常に索敵を展開しているし、【建城鉄壁】もいつでも発動可能にしてあるのだ。
会話しながらでも決して油断していない。
「あのー、もう魔物を倒しちゃったって聞いてきたんですけど、速すぎませんか」
「俺たちに任せりゃ快適に進めるってことだぜ。アリステラ嬢ちゃんたちは安心してついてきな」
「は、はい。お願いします」
「せっかく倒したんだ。ミリアン、バジリスク収納しておいて」
「は~い」
こういう時にもミリアンの遠隔収納が役に立つ。
見ただけであっという間に収納できるからな。
「おい、魔物が消えたんだが」
「ミリアンの遠隔収納だ。一応話したと思うけど?」
「聞くのと見るのでは大違いだな。アリステラの穴掘りもそうだが、規格外が揃いすぎてる」
「マックリンもそのうちの1人だけどな」
「へっ、負けないように頑張るぜ」
その後は魔物が現れることなく、最後はミリアンの遠隔収納でダンジョン核を収納した。
地上へ転移で戻れば攻略完了だ。
「それじゃ次行きますか」
「感動も何もねえな。戦闘も1回だけとか作業みたいなものに感じるぞ」
「ああ、それでいいと思う。今まで散々理不尽に溢れた魔物にやられてきたんだ。こっちも作業代わりという理不尽さで攻略してやろう」
「おう、わかった。次にいこうぜ」
ダンジョン攻略で戦闘を避けていたのは、冒険者ではないメンバーに魔物と対峙させないためだ。
以前4つのダンジョン核を攻略対象としたときは、1つだけ魔物がなかなか避けられなかったので攻略を中断した。
今回は強力な戦闘担当がいるので魔物を避けることなく、まっすぐにダンジョン核を目指せる。
結果は驚異的な成果となってあらわれた。
この日6つのダンジョン核を回収することに成功したのだ。
ダンジョンの1つに地上寸前ま空間ができていたところがあった。
アリステラに埋めてもらったが魔力を多く消費してしまった。
まだ時間も早めで、アリステラも魔力は十分あると言っていたが、無理せず帰還することにした。
これがなければ、さらに回収することができてだろう。
そして次の日。
なんと残りの攻略対象全てである11個のダンジョン核を回収した。
後に回したところほどダンジョン核が小さめで層が浅いこともあるが、よくこれだけの短時間で大量に回収できたものだ。
やはり魔物との戦闘が短時間で終わるのが大きな要因だろう。
魔物からすれば入り組んだ空間に隠れているつもりでも、真上から来られるのだからたまらない。
さらに敵が来たと感じたときにはもう遅く、瞬く間に殲滅されてしまうのだ。
魔物に同情の余地はないのだが、思うところがないわけでもない。
自分がその立場にだけはなりたくないよなと……
こうしてダンジョン核の大量回収は成功したが、喜んでばかりもいられない。
帝国が嫌な感じと言っていたことが気になる。
ジェロビンからの情報を待つだけでなく、課題に応える準備をしておく必要があるだろう。
今回もお読みいただき、ありがとうございます。
次回は「魔道具クランを訪ねて」でお会いしましょう。




